第18話

悲しい匂い
1,883
2020/07/11 11:31
栗花落カナヲ
栗花落カナヲ
伊之助、はい、ご飯。
カナヲがおにぎりを手渡す
あれから2週間。
いつものようにお見舞いに来た伊之助が、


炭治郎の様子が違うと言い出した
そのため、朝から2人が見張っているというわけだ
栗花落カナヲ
栗花落カナヲ
どう?
嘴平伊之助
嘴平伊之助
コイツは絶対おきる
嘴平伊之助
嘴平伊之助
もう少しだと思う
ストッパーが居なくなった伊之助は暴走するかと思いきや、むしろ以前よりも大人しくなっていた
悲しみは、人をかえる
強く純粋な怒りは


手足を動かす揺るぎ無い原動力になる
それはそうと、伊之助もカナヲもあなたを恨んではいなかった
あなたにそうせざるを得なくした、社会を恨んでいた
あなたの想いに気づけなかった、自分を恨んでいた
自分は未熟だと嘆きはしなかった
もっと強くあれた筈なのに、そうしなかった怠惰を後悔していた
人は、歪んだ怒り恨みを人に向ける
その点では、2人はとてもまっすぐだった
竈門炭治郎
竈門炭治郎
い……………け……ヲ……………
嘴平伊之助
嘴平伊之助
!!
栗花落カナヲ
栗花落カナヲ
炭治郎!!
炭治郎の目が、わずかに開いていた
酸素マスクの向こうの口が、ゆっくりと小さく言葉を紡ぐ
竈門炭治郎
竈門炭治郎
ふた、り、とも、
竈門炭治郎
竈門炭治郎
悲し、匂い、する
栗花落カナヲ
栗花落カナヲ
ったんじろっ
嘴平伊之助
嘴平伊之助
権八老、おせえよ!
嘴平伊之助
嘴平伊之助
もう、朝が何回も来ちまったぞ!!
栗花落カナヲ
栗花落カナヲ
何があったの?
栗花落カナヲ
栗花落カナヲ
なんで、なんで…
2人は、炭治郎の目の前で泣き続けた

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