……眩しい。
いつの間にか眠っていたようだ。
そう、呟いてみる。
声なんか、帰ってこない……筈なのに。
目の前に現れたのは、昨日も見た男の子だった。
男の子にしては少し長い薄紫色の髪を揺らし、部屋に入ってくる姿が見えた。
暖かい気持ち。いつぶりだろう。
こんな気持ちになったのは。
『お兄ちゃん』
その言葉を聞いた瞬間、一年前のあの記憶がフラッシュバックした。
嫌だ、嫌だ、嫌だ……
もう、私を、見捨てないで……!
苦しい、辛い、悲しい。
見捨てられたくない。
嫌な思い出を我慢して、途切れ途切れに話す。
ねえ、君は、私を、見捨てる……?
上手く、話す事が出来ない。
また見捨てられそうで、怖かった。
もう、誰にも裏切られたくなんてないから。
そう言って、はやては私の頭を撫でてくれた。
ああ、そうだ。
私は、こうしてほしかったんだ。
愛して、ほしかったんだ。
そう言えば、孤児院にいた時、皆とも約束した。
『また会おう』って。
もし、また会える日が来たのなら、会いたいなぁ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!