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第1話

過去の記憶
150
2021/01/16 10:59
お前は、もう要らない
そう言われて、どこか遠い所に捨てられた。
もう、苦しくなんてなかった。
辛くなんてなかった。
感情なんか、微塵も感じなかった。
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兄に捨てられてから、一年が経った。
一時期孤児院に預けられた事もあるが、引き取られてすぐに捨てられた。
いっそ、このまま死んでしまえばいいとさえ思った。
でも、私の救世主ヒーローは、突然現れた。
颯(過去)
……ねえ、君、大丈夫?
小さな男の子が、私を心配そうに見つめている。
私の今の格好は、寒い季節には見る筈もない半袖のシャツに、短いズボンのみ。
正直言って、寒い。
颯(過去)
……寒くないの?
you(過去)
寒い、けど、仕方がない
そう、口にした。
実際、そうだった。
誰も私を助けてくれない。
ねえ、貴方も私を見捨てるんでしょ?
颯(過去)
……帰らないの?
少年は、至って不思議そうに聞いてきた。
よく考えれば、こんな子供が路地裏で丸まりながら震えていれば、誰でも気になるだろう。
you(過去)
帰る場所、ない
you(過去)
誰も、私を助けてくれない
切れかけの体力を振り絞り、そう呟いた。
ああ、もう、限界みたいだ。
目蓋がゆっくりと降りてくる。
まあ、ここで死ねたのなら、いいのかな……?
そう心の中で呟いた瞬間、私の意識は途切れた。

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