そう言われて、どこか遠い所に捨てられた。
もう、苦しくなんてなかった。
辛くなんてなかった。
感情なんか、微塵も感じなかった。
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兄に捨てられてから、一年が経った。
一時期孤児院に預けられた事もあるが、引き取られてすぐに捨てられた。
いっそ、このまま死んでしまえばいいとさえ思った。
でも、私の救世主は、突然現れた。
小さな男の子が、私を心配そうに見つめている。
私の今の格好は、寒い季節には見る筈もない半袖のシャツに、短いズボンのみ。
正直言って、寒い。
そう、口にした。
実際、そうだった。
誰も私を助けてくれない。
ねえ、貴方も私を見捨てるんでしょ?
少年は、至って不思議そうに聞いてきた。
よく考えれば、こんな子供が路地裏で丸まりながら震えていれば、誰でも気になるだろう。
切れかけの体力を振り絞り、そう呟いた。
ああ、もう、限界みたいだ。
目蓋がゆっくりと降りてくる。
まあ、ここで死ねたのなら、いいのかな……?
そう心の中で呟いた瞬間、私の意識は途切れた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!