できるだけ話したくないと隠れようと思ったのにバチッと柊木先輩と視線が絡まる。
無視できないじゃん…。
意を決して笑顔で近づいた。
やっぱり瑠璃さんの椛乃に対する視線は冷たくて鋭い。一方の柊木先輩は何も言わない。
莉奈にごめんなさいと謝りながら雪翔くんと腕をからませた。
雪翔くんも何かを察したみたいで当たり障りのない返事をしてくれる。
柊木先輩の顔は最後までまっすぐ見れず、そのまま急いでその場を離れた。
***
近くの椅子に座り、雪翔くんに謝った。
言いにくそうに言う雪翔くんに力なく頷いた。
その後、雪翔くんは何も言わず横に座った。
なんで会っちゃうのかな。
柊木先輩、今日もかっこよかったし、近くにいるだけで胸が痛くなるぐらい早く鳴って…。
そのとき、場違いのように明るい声を出す莉奈がやってきた。
驚きに元から大きい目をもっと大きくする。
まだ会ってしまったときの動揺があるけど、ここで泣いてしまえばずっと泣いちゃいそう。
気を遣わせちゃったはず。
ごめんね。
2人に手を振って背を向けた。
涙が流れないように少しだけ上を向いて。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。