ひとりで話して帰ってしまった有栖に笑いが漏れる。
一緒にいても飽きねーもん。
聡と出会ったのは高校の時。
高校で同じクラスになったこいつと仲良くなるのに時間は要らなかった。
気があって学校ではいつも一緒にいるほど仲が良かった。俺はバイト、聡は野球で放課後はあんまり一緒にいることは無かったが、一番の親友だ。
聡は高校野球でプロにスカウトされ、高校を卒業と同時にネクサスに入団した。
それでも聡は俺のいちばんの理解者でよく助言してくれていた。
俺と有栖に何も無いということに。有栖は俺の恋愛対象ではないということに。
有栖をそういう対象で見たことがない。
聡、おまえ何言ってんのか分かってんのか?
ふざけんなよ?うちの瑠璃に手出すのは100万年早いっての。
こいつ俺にも負けないくらい瑠璃のこと好きじゃんとか思わせられてしまったし。
あとから聞いたら高校時代から片思いしてたっぽいし?
あいつになら瑠璃を任せていいと思った。
しみじみと肩を叩いてくる聡。
しゃべってらんねー。
俺は聡を無視して歩き出した。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!