私には好きな人がいる。
私のことを恨めしそうな顔で見るのは神林瑠偉先輩。
私はふふっ、と笑みをこぼし、先輩の隣を歩く。
…先輩には好きな人がいたらしい。
失恋したって言ってたもん。
だから、先輩の好きな人は私じゃない。
知っていたけど苦しくて苦しくて、そのことを聞いた日、家で一晩中泣いた。
だけど、先輩の傷を癒してあげられればいいなとかあわよくば私のことを好きになってくれないかなとかまだまだ私は先輩を諦められないことに気づいた。
せんぱいの服の袖を掴み、駅前に走り出した。
いつの間にかせんぱいのほうが前にいるんだもん。
そう言って私の頭をぽんぽんとするせんぱいに胸がドキッとなった。
なんですか、それ…
私の頭をくしゃくしゃにしてくるせんぱい。
大爆笑するせんぱいに私まで笑ってしまう。
そういうの聞かれてもわかんない、、
私よりも高いもんは高いじゃん。
でも周りの男の子の中でも高い方だしなぁ。
煽るような顔をするせんぱいのべーっと舌を出した。
ぜーったいにやだ。
私はせんぱいの娘じゃなくて彼女になりたいんだもん。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。