いよいよやってきた文化祭。
いつもとは違った楽しそうな雰囲気。
キラキラした学校の校舎。
特別な雰囲気を醸し出す学校にずっといたい気分になる。
学校にやってきた椛乃たちは更衣室で服に着替え、メイクが得意な子たちにメイクをしてもらった。
莉奈はナチュラルメイクでいつもどおりやっぱり可愛い。
いつもはおろしているふわふわのミルクティーベージュの髪をふたつにくくり先の方を軽く巻いている。
ちなみに椛乃はゾンビの花嫁というコンセプトなのもあり、血糊を口元につけたりした。メイクも暗めの色で濃く仕上げてくれた。
いつもはバードテールにしている髪をふんわりしたシニヨンにしてくれた。
他の子も囚人服だったりと遊び心満載の衣装たちだ。
ちなみに椛乃たちは宣伝係。
みんなに来て来て、という係だ。
莉奈は虫眼鏡まで持っている。
椛乃は宣伝用のボードを持ち、来た人みんなに呼びかけた。
そう言ってウインクする莉奈に何人行ってくれたのかは定かではないが、結構行ってくれたはず。
***
店番が終わり、教室に戻ると思った以上に繁盛していた。クラスメイトになぜかとても感謝され、椛乃たちは衣装を着たまま回ることにした。
冗談じゃなくて本気でいけると思うんだけど…。
ミスコンのエントリーはまだできるらしい。
だから今からでも遅くないんだけど…。
本気で言っているのに冗談なんだと流す莉奈。
本当に可愛いのに〜、と唇を突き出した。
「ねぇねぇ、キミたち、可愛いね」
近くにいたチャラそうな男の子たちがそんなことを言ってくれた。褒められて嬉しくないわけがない。
「一緒に回らない?」
“一緒に回らない”…?
これってもしかしてもしかしなくてもナンパですかっ!?莉奈目当てですなっ!
莉奈の手を掴み一目散に駆け出そうとしたけれど莉奈の膝が震えて逃げれそうにない。
どんどん近づいてくる男の子たちに嫌悪感が増していく。
ふわっと体に腕が回った。
ま、まさか、この声は柊木先輩ですかっ!?
ちょっと待って。
人の彼女だってさ。
追い払ってくれるためのウソだって分かってるけどそれだけで嬉しい。
…嬉しいけど複雑で諦めようと頑張っていたのにまた振り出しに戻ってしまったような気になる。
でもやっぱり胸の高まりはどうすることもできず、先輩に鼓動の音が聞こえないか気にしてしまう。
あまりのイケメンだからかナンパしている男の子たちは走って去っていった。
振り返ると案の定、柊木先輩がいた。
柊木先輩はタキシードを着ていて思わず見惚れてしまう。
真顔で
次々と
怒られてしまう。
嬉しさと気恥しさが複雑にいりまじる。
ちらりと後ろには瑠璃さんもいて、柊木先輩は瑠璃さんと回っていたことを知ってしまった。もしかしたら、もしかしたら付き合っていないかもと淡い期待をしていたのにどん底に落とされた気分だ。
前からバタバタと笑顔の雪翔くんが走ってきた。
大きく手を振りぴょんぴょんと跳ねて、ここだよと合図する。
そのとき体に腕を後ろから回された。
その途端腕を引かれ走り出した。
ねぇ、先輩。
先輩は今、何を考えているの…?
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。