「ままぁ〜っ!!」
声がするほうを見てみると小さな小学校低学年くらいの女の子が道端にうずくまって泣いていた。
「ままがいなくなっぢゃっだっ…」
迷子…、だよね??
どうしよう…。
この子のお母さんを探してあげたい。
春樹くんを見るとうん、と頷いてくれた。
ニコッと笑って女の子の手を取る春樹くん。
女の子は涙を拭いこくっと頷いた。
椛乃も女の子のもう片方の手を握った。
泣き止んで笑顔を浮かべてくれたのあちゃんと一緒に3人で歩き出した。
てことはのあちゃんはご両親と妹さんと来たんだ。
どこにいるんだろう、のあちゃんの家族…。
春樹くんの言葉になるほどっと頷いた。
やっぱり、春樹くんはすごい。
いつもお父さんにやってもらっているらしく、慣れたものだとのあちゃんが春樹くんの上に乗った。
いるかな…。
この辺りをくるくるっと回っていると、のあちゃんがあっと声を上げた。
小さな手を振るのあちゃんにのあちゃんのご両親とお母さんが抱っこしている赤ちゃん。
春樹くんから降りたのあちゃんはお母さんに抱きついた。
お母さんたちを見て安心したのかのあちゃんが堰を切ったように泣いてしまった。
のあちゃんのご両親がすごくありがとうと言ってくれた。のあちゃんも最後、笑顔で手を振ってくれて、本当に可愛かった。
春樹くん、子どもの扱いに慣れているようでとてもうまかった。
えーと、〝どういう意味〟とは…?
春樹くん、すっごい子ども慣れしてるからいいパパになりそうだねって…、え?
狼狽する椛乃に意地悪く笑って最後まで言わせようとする春樹くん。
春樹くんはそんなに言わせたいらしい。
恥ずかしくて言えないよ…。
勇気を振り絞って言ったにも関わらず、春樹くんが大笑いをしている。
椛乃、すっごく勇気出したんだよ…?
目に涙まで浮かばせて笑っている春樹くんに怒るのもなんだか馬鹿らしくなってきた。
ふと、春樹くんが涙を拭い、真面目な顔をして目をしっかりと合わせてきた。
椛乃はしっかり大好きな春樹くんの手を握り、ゆっくりと歩き出した。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。