第36話

迷子
1,553
2021/05/23 00:26
「ままぁ〜っ!!」

声がするほうを見てみると小さな小学校低学年くらいの女の子が道端にうずくまって泣いていた。
小林椛乃こばやしにの
どうしたの?
「ままがいなくなっぢゃっだっ…」

迷子…、だよね??
小林椛乃こばやしにの
春樹くん…
どうしよう…。
この子のお母さんを探してあげたい。

春樹くんを見るとうん、と頷いてくれた。
柊木春樹ひいらぎはるき
お兄ちゃんとお姉ちゃんとママを探しに行こっか!
ニコッと笑って女の子の手を取る春樹くん。
女の子は涙を拭いこくっと頷いた。
小林椛乃こばやしにの
よーし、行こうっ!!
椛乃も女の子のもう片方の手を握った。
柊木春樹ひいらぎはるき
お名前は?
のあ
のあっ!!
小林椛乃こばやしにの
のあちゃんって可愛い名前だね!
泣き止んで笑顔を浮かべてくれたのあちゃんと一緒に3人で歩き出した。
柊木春樹ひいらぎはるき
今日はだれと来たの?
のあ
ママとパパとゆあちゃんときたの
のあ、ゆあちゃんのお姉ちゃんなの
てことはのあちゃんはご両親と妹さんと来たんだ。
どこにいるんだろう、のあちゃんの家族…。
柊木春樹ひいらぎはるき
のあちゃん、
肩車するからママたちを探してね
春樹くんの言葉になるほどっと頷いた。

やっぱり、春樹くんはすごい。
小林椛乃こばやしにの
のあちゃん、怖くない?
のあ
だいじょーぶ、のあ、できるもん
いつもお父さんにやってもらっているらしく、慣れたものだとのあちゃんが春樹くんの上に乗った。

いるかな…。
この辺りをくるくるっと回っていると、のあちゃんがあっと声を上げた。
のあ
ままーっ!!
小さな手を振るのあちゃんにのあちゃんのご両親とお母さんが抱っこしている赤ちゃん。

春樹くんから降りたのあちゃんはお母さんに抱きついた。
のあ
ままぁ〜!!
お母さんたちを見て安心したのかのあちゃんが堰を切ったように泣いてしまった。
小林椛乃こばやしにの
良かった…
のあちゃんのご両親がすごくありがとうと言ってくれた。のあちゃんも最後、笑顔で手を振ってくれて、本当に可愛かった。
小林椛乃こばやしにの
さすが、春樹くんだねっ!!
春樹くん、子どもの扱いに慣れているようでとてもうまかった。
小林椛乃こばやしにの
将来、子どもができたら
いいパパになりそう!
柊木春樹ひいらぎはるき
…それ、どういう意味?
小林椛乃こばやしにの
へ…??
えーと、〝どういう意味〟とは…?

春樹くん、すっごい子ども慣れしてるからいいパパになりそうだねって…、え?
小林椛乃こばやしにの
違うの…っ!!
い、いや、違わないんだけどっ!!
柊木春樹ひいらぎはるき
つまり?
狼狽する椛乃に意地悪く笑って最後まで言わせようとする春樹くん。
小林椛乃こばやしにの
春樹くんのいじわる…
柊木春樹ひいらぎはるき
ん、だからつまり?
春樹くんはそんなに言わせたいらしい。

恥ずかしくて言えないよ…。



小林椛乃こばやしにの
…将来、結婚してくれますか?
柊木春樹ひいらぎはるき
ぷっ…!!
勇気を振り絞って言ったにも関わらず、春樹くんが大笑いをしている。
小林椛乃こばやしにの
春樹くん、ひどーいっ!!
椛乃、すっごく勇気出したんだよ…?
柊木春樹ひいらぎはるき
椛乃はいつも俺の斜め上を行くよな、プロポーズされるとは思ってなかった、くくっ
目に涙まで浮かばせて笑っている春樹くんに怒るのもなんだか馬鹿らしくなってきた。
小林椛乃こばやしにの
ふふふっ
ふと、春樹くんが涙を拭い、真面目な顔をして目をしっかりと合わせてきた。
柊木春樹ひいらぎはるき
将来俺からプロポーズするからさ、
それまで待っててよ
小林椛乃こばやしにの
うん…!!
椛乃はしっかり大好きな春樹くんの手を握り、ゆっくりと歩き出した。

プリ小説オーディオドラマ