あのデートから1ヶ月ほど──。
あれから椛乃は柊木先輩と一度も話していない。
学年が違うため、柊木先輩をあまり見ないことが幸いかも。たまに瑠璃さんと一緒にいるところを見かけてしまうと胸が痛んでしまう。
心配そうな莉奈に笑顔を見せたつもりだけど、痛々しくしか見えないみたい。
空っぽになってしまった心が少し温まった。
せっかくの雪翔くんとのデート。
椛乃が邪魔するわけにはいかない。
ダメかな、なんて上目遣いで見てくる莉奈に断ることなんてできなくて雪翔くんにごめんなさいと思いながら承諾した。
***
ショッピングモールで莉奈と雪翔くんと合流し、久しぶりに会った雪翔くんと話していた。
雪翔くんも椛乃の状況を知っているのかな。
莉奈はたぶん椛乃に気を遣って、今日は誘ってくれたんだと思う。
今日くらい笑顔で楽しまなきゃね。
そういえば椛乃の誕生日は6月5日であと少しだ。
椛乃が、今欲しいもの…。
柊木先輩──。
と頭をよぎってしまった。
忘れようとしてるのになぁ。
というか柊木先輩はものじゃないのに椛乃のものにしたいって椛乃は何様なんだよ。
ははっ、と乾いた笑いを漏らす。
引きづって椛乃、アホだよね。
…今日は柊木先輩のことは忘れて楽しんでやるんだから!
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。