プロ野球が始まるのは夕方頃から。
集合ももちろん夕方頃だ。
だけど、私は朝から起きていた。
なんでかって?
そりゃあ
よしっ
今日はかわいくしていくんだぁーっ
服はどうしようかな……
髪型も……
悩むことがいっぱいですっ
***
待ち合わせ場所で時計をチラチラしながら先輩を待つ私。ショーウィンドウに反射して映る私はとびっきりのおしゃれをしている。
てろんとした薄めのベージュ系のロングワンピースに、ゆるふわなお団子。後れ毛も巻いたし、帽子をいい感じっ。
先輩まだかなぁー
笑顔でやってくるせんぱい。
白のTシャツにシンプルな半袖のカーディガンを羽織り、下はシンプルな黒のパンツ。
え、かっこいいんだが!?
いつもかっこいいけど、デートってだけで何割増しかかっこよく見えるし、シンプルだけど、せんぱいイケメンだからおしゃれにみえる!!
イケメンってずるいっ。
せんぱいの“好き”という言葉に息が止まりそうになる。
違う違う違う違う。
なにドキッとしてんだか。
これは“私”が好きなんじゃなくて“野球”が好きってことなんだからねっ!!
何勘違いしてるの私!!
……でも、
いつか、せんぱいに好きって言って貰える日が来たらいいなぁ。
私の服を見ていうせんぱい。
ギャップでちょっとぐらいドキッとしてくれないかな。
ちらっと上目遣いでせんぱいを見る。
思い切って聞いた私とは裏腹にさらっと言ってしまうせんぱい。
うわぁぁあっ。
しぬ、私もう命日かもしれないっ!!
せんぱいに可愛いって言われちゃったっ!!!!!
今絶対顔赤い。
せんぱいにバレてるかな……。
勘違いしそうになりますよ、せんぱいっ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!