「久しぶりだな、瑠偉」
せんぱいと話すその人は
なんか見たことがあると思ったら、今日、満塁ホームラン打ってた人じゃん!!!
帽子を被っているけど、顔をよく見るとそうじゃんか!
まてまてまて、びっくりなんだが!?
混乱しながらもとりあえず挨拶を済ませる。
せんぱいったら!!先に言ってよね!?
もう!!
私とせんぱいの前で大爆笑する原木さん。
褒められてんのかな、これは。
原木さんの言葉に体がこわばる。
“瑠璃ちゃん”……?
……あぁ、せんぱいの好きな人か。
わかってたじゃん、せんぱいに好きな人がいるって。だけどやっぱり胸が痛いや……。
せんぱいの言葉に胸がもっとえぐられる。
いや、いやそうなんだけどさ!!
……それより、か。
私がせんぱいにとって取るに足らない存在ってことわかってたはずなのになぁ……。
出そうになる涙を必死にこらえる。
……。
……シスコン……?
シスコンはシスターコンプレックスだけども。
たしかにコンプレックスはおかしいかもしれないけど……。
へなへなと座り込む私。
失恋したんだと思っていたのに。
初めてあった原木さんの方がせんぱいよりわかってる。
せんぱい、それホントに言ってる?
そういうとこも好きだけど!!
びっくりとした顔をするせんぱい。
もう暗いし、そろそろ帰らないと心配性のパパとママが通報しかねないもんね。
ばいばーいと手を振り、せんぱいたちに背を向ける。
あーあ、楽しかった。
せんぱいとデートしちゃったよ!!
しかもせんぱい好きな人いなかったってことだよね!?
もしかしたら私のライバルはせんぱいの妹さんなのかもしれない。
やだ、絶対強敵じゃないか!!
せんぱいの妹だよ?絶対可愛いって。
うわ、見てみたいうわぁぁぁあ。
情緒がおかしいまま私は一人、家に帰った。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。