第3話

第3話・わたし“だけ”じゃ足りないの?
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2021/03/06 16:34
 連絡を受けてから美都は、今まで以上にマサヤのとりこになった。

 食事の時も、風呂に入る時も、マサヤの歌を聞くようになった。

 そして、ある日。
美都の母
美都の母
美都。食事の時くらい、スマホをいじるのを止めたら?
美都
美都
分かってるよ。
……うるさいな
 そう答えてスマホを置いたものの、耳にはイヤホンを指したまま。

 ワイヤレスイヤホンを髪で隠し、マサヤの歌声を聞いている。母親は気づいていない。

 美都は、無言で食事をとった。
美都
美都
(お母さん、気づいてないみたい……)
美都
美都
(この方法なら、学校でもバレないかも……)
 それから美都は、ほとんどの時間をマサヤの歌声と過ごすようになっていった。

 家でも、学校でも。

 眠りにつく、その瞬間までも……。



──1週間後
美都
美都
(マサヤさんから、連絡きてるかな?)
 毎日学校から帰ると、美都は自室にこもり、マサヤからの返信を確認するようになった。

 初めて連絡がきた日から、1日に1度メッセージを送っている。

 マサヤからの返信が来るのは、その日のうちか次の日。そんな交流が続いていた。
美都
美都
返信、きてる……!!
マサヤ
マサヤ
「最近、すごい勢いで再生回数増えてるんだけど」
マサヤ
マサヤ
「もしかして、君?」
美都
美都
(そうだよ……)
美都
美都
……
美都
美都
「マサヤさんの実力ですよ!!」
美都
美都
「だって、わたし」
 本当は、自分だと言ってしまいたい。

 だけど美都は、そうしなかった。

 もし自分1人だけが再生回数を伸ばしていると知ったら、マサヤは傷つくかもしれない。そう考えたのだ。
美都
美都
「SNSで、たくさん宣伝してますから!」
美都
美都
「マサヤさんの歌声が素敵だって」
マサヤ
マサヤ
「そっか。じゃあさ……」
『友達にも
 宣伝してもらえると
 嬉しいな?』
美都
美都
(友達にも?)
美都
美都
(それって……)
美都
美都
……
美都
美都
(わたしだけじゃ……足りないってこと……?)
『友達にも』

 マサヤの軽い一言は、友達のいない美都の心に影をさした。

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