第6話

第6話・わたしだけのものに
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2021/03/19 11:56
美都
美都
お願いっ!!
美都
美都
わたしだけのものになって!!
マサヤ
マサヤ
くっ!!
 だが、美都の振り下ろしたナイフは、マサヤの手の中に収まっていた。

 ナイフを握りしめたマサヤの手からは、真っ赤な血がポタポタと流れ落ちる。
美都
美都
……どうして?
マサヤ
マサヤ
ミトちゃんが、あんまりにも怖い顔してるから……
マサヤ
マサヤ
もしかして、と、思ってね……?
美都
美都
ごめんなさい……
美都
美都
でも
美都
美都
でも、わたし……!
 美都の目に涙が浮かぶ。

 だが、その手には力がこもったまま。

 やり直せないのなら、いっそのこと。このナイフが、マサヤののどを切り裂いてしまえばいいのに。

 美都は、そう思った。
美都
美都
誰にも、聞かせたくない
美都
美都
誰にも、見せたくない
美都
美都
あなたの声も
美都
美都
あなたの顔も
美都
美都
わたしだけのものに、してしまいしたい……
マサヤ
マサヤ
それは、俺も……同じ
美都
美都
え……?
マサヤ
マサヤ
俺も、君と……
マサヤ
マサヤ
同じ気持ちだよ?
美都
美都
わたしと……同じ……?
 マサヤの言葉に動揺していると、ナイフを持っていた右手から、自然と力が抜けていく。

 その瞬間、マサヤに腕を強く引き寄せられた。
美都
美都
きゃっ!!
 勢いで、美都は玄関に倒れこんだ。

 そして、倒れた美都の顔をマサヤは、片足で踏みつける。
美都
美都
ぐっ……
 男の力に適うはずがない。美都の手から力が抜け、握りしめていたナイフが床へと落ちた。
マサヤ
マサヤ
俺たちは、本当に……
マサヤ
マサヤ
“似た者同士”だね?
 マサヤは美都を踏みつけたまま、果物ナイフを拾うと、彼女の耳元でそうささやいた。
美都
美都
な、何のこと?
美都
美都
(わたしたちが……似た者同士?)
マサヤ
マサヤ
俺もね? ほしかったんだ
 マサヤの掴んだナイフが、美都の左頬に触れる。

 刃の冷たい感触が、美都の左頬の傷あとをそっと撫でていく。
美都
美都
ひっ……
美都
美都
(つ、冷たい……)
マサヤ
マサヤ
俺の声だけを聞いて
マサヤ
マサヤ
俺だけ歌だけを聞きたいと願う
マサヤ
マサヤ
その、耳が……
 ナイフの刃が、ゆっくりと、美都の左耳を切りつける。
美都
美都
あ、あああああぁぁぁっ!!
美都
美都
いやあああぁっ!!

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