私はとにかくその場を離れたくて泣きながら走っていた。
ドン!
と、誰かとぶつかってしまった。
「すいません」と謝りながらまた走っていくと…
「あの!」と誰かが私の腕を掴んだ。
私は振り向くと、そこには走ってきたのだろうか、はぁはぁ言いながら息を整えている1人の男性が…
私は、泣いてる顔をバレないように少し下を向いた。
すると、男性が…
「これ、さっきぶつかった時に落としましたよ?」
と、一言。
その落とした物をその人は私に渡してきた。
「これ…」
その落し物は夫と出かけた時に撮った写真で懐かしくなった。
私は、また泣いてしまった。
すると、男性が思わぬ行動に…
その男性はギュッと私を抱きしめて「何があったかわからないですけどこうしたら泣いてる顔を周りに見られなくてすみます。だから思いっきり泣いていいですよ?」と耳元で呟いた。
知らない男性なのに、その言葉が一番嬉しくて私はその男性の背中にいつの間にか手を回して抱きしめていた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。