カールハインツさんに案内されながら一緒に「逆巻家」へと歩いていると、ふいにカールハインツさんがそんなことを言った。
確かに、お父さんは遠い親戚だと言っていたし、私が幼い頃に会っていてもおかしくはないだろう。でも...私は今まで気がついた時には、物心ついた時にはすでにお父さんと暮らしていて、記憶の始まりはお父さんとの暮らしだった。そして今まで疑問に思わずに過ごしていたが、考えてみればお父さん以外の...「親戚」という人達と会ったことがなくて、遠い親戚だというカールハインツさんが初めてなのだった。
そう言ってカールハインツさんは静かに微笑み、また少し歩いて...。
カールハインツさんにそう言われ、見上げると目の前には広大な屋敷が建っていた。思えば、今までお父さんと暮らしていた家もそれなりに大きな屋敷だったけれど...それよりもはるかに大きなお屋敷のようで、私は圧倒されながらも驚いた。
私は少し疑問に思いつつも、カールハインツさんに促されるままその屋敷へと足を踏み入れて...そこから私の運命は、大きく回りだしたー...。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!