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第1話

G
571
2021/07/28 02:58
もう嫌だった
逃げ出したかった
辛くて苦しくて息ができなかった
息が吸えない
出てくるのはかすれた声だけ
殴られたお腹が痛い
蹴られた背中が痛い
毎日辛くて苦しくて死にたかった








だから
死ぬことに決めたんだ
あるかわからない来世に期待して
空を自由に飛ぶ鳥のように飛ぼうと決めたんだ
フェンスに手を掛けて
外側へ出た
これで自由だ
身を重力に託そう
そうした時だった
そう、あの時は確か
雲ひとつない晴天だった
「何してんの?」
入口付近で背をもたれて立つ人影が見えた
あなた「…貴方こそ、そこで何してるの」
??「サボりみたいなもん」
男はそう言いながらこちらに向かってきた
??「あれ、君、隣のクラスの…」
(どこかで見た気が…)
??「あ、俺角名。角って書いて名前の名」
あなた「スナ…」
角名「そう。えっと…」
あなた「菊池あなた。菊に池って書いて菊池」
角名「そうだ。菊池さん。」
"こっちおいでよ"
そう言いながら私に手を差し伸べた
その手を素直に取ってしまった自分に後悔をした













次の日も
彼は屋上に来た
私は上手く話を丸め込められ
また次の日も
彼は屋上に来た
そのまた次の日も
雨の日も
雪の日も
花粉が酷い日も
彼は毎日私のいる屋上へ来た
時間を変えても彼は来た
あなた「なんで私にそんなに構うの…?」
私の問に彼は答えない
あなた「ねぇ「特に意味なんてないよ」
彼は遠くを見つめながら
角名「ただの暇つぶし」
そういう彼の背中は
とても大きかった












角名「そうだ。菊池さん」
自殺するの__
"やめない?"








ニッと笑うその顔は
私には天使に見えたんだ








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恋と書いてレンと読みます
不束者ですがよろしくお願いします

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