どぬくside
俺達は学校を休んで病院にいる。
あなたの下の名前を見舞ってから、
先に出ると告げて奏の病室に。
大きな引き戸を横にスライドさせて、
中に入る。
ベッドの隣りの椅子に腰を掛けて、
ベッドの上に寝た奏に目を落とす。
目を閉じて開かない奏。
白い瞼で眼を覆い、スヤスヤと眠る、
静かな奏に向かって言う。
視界が霞む。
自分の顔が崩れてくのが分かる。
留めとなく溢れる涙。
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気づけば好きだった。
「守りたい」って思えたんだ。
片想いでも良かった。
せめて、想いは伝えようと思った。
いつまでも俺が戸惑ってるからだ。
今となっては後悔しかない。
もっと早く言えば良かった。俺に勇気があれば…。
そう言って奏が寝返りを打とうとする。
そんな脚で寝返りなんて……。
思わぬ痛みに奏が叫ぶ。
“痛ッ”って…………起きてる?
さっきの……聞かれてた?
困る。聞かれていませんように。
向こうを向いた奏の顔は、
少し紅く見えた──────────。