第37話

思いっきり笑って下さい。
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2020/03/02 23:28
緊張する、雪柱様から離れてはいけない。
無茶をさせることも、出来ない。
怪我だってさせられない、俺がちゃんとしなきゃ。
不死川玄弥
不死川玄弥
ゆっ……あ、えっと………
貴女
貴女
そうだな、今は私とお前は姉弟と言う設定になっている。なんて呼んでくれても構わない
不死川玄弥
不死川玄弥
じゃ、じゃあ……姉さん…
貴女
貴女
なんだ、玄弥
不死川玄弥
不死川玄弥
……
恥ずかしい。
兄貴しかいなかったからか、姉さん呼びは慣れない。
準備をしていると、さっそく扉が開く。
もぶ
もぶ
こんにちは〜
貴女
貴女
……はい、こんにちは
不死川玄弥
不死川玄弥
!!
ゆ、雪柱様、めっちゃ笑顔……!!
眩しい〜……!!!
でもなんか、作ってる感ある。そう思うのは俺だけ?
もぶ
もぶ
今日来たんですってね、よろしくね。なんでも聞いてちょうだい、相談乗るわ
貴女
貴女
はい、姉弟だけでやって行くので不安でしたが、嬉しいです。ありがとうございます
もぶ
もぶ
まあ、2人揃って別嬪さんなんだから〜
貴女
貴女
ふふっ、ありがとうございます。ほら、玄弥。挨拶なさい
不死川玄弥
不死川玄弥
………ど、どうも……
ぎくしゃくしながらも、おばさんに挨拶をする。
貴女
貴女
すいません、弟は人見知りでして…
もぶ
もぶ
いいのよ、いいのよ!よろしくね!
貴女
貴女
はい、姉弟共々、よろしくお願いします
おばさんが出ていくと、
雪柱様はまたいつもの真顔に戻る。
貴女
貴女
疲れる
不死川玄弥
不死川玄弥
すごい、ですね……
貴女
貴女
そうか?
不死川玄弥
不死川玄弥
はい。あのっ、いつも笑顔って言うのは……
貴女
貴女
…………………無理
不死川玄弥
不死川玄弥
ですよね
思わず苦笑い。
きっと、心の底から笑ったら雪柱様は綺麗な顔をするんだろうな、なって思っている自分がいる。
年相応の大人のような綺麗な笑顔なんだろう。
何年、笑っていないのだろうか。想像するだけ、きっと無駄なんだろうな。
だって、雪柱様は………。
貴女
貴女
不死川玄弥
不死川玄弥
不死川玄弥
は、はいっ
貴女
貴女
今日は挨拶も兼ねて店を開ける。準備をするぞ
不死川玄弥
不死川玄弥
わかりました
店の奥に行けば、
用意されてるであろう衣服が並んでいた。
不死川玄弥
不死川玄弥
す、すげー………こんなにあるのか………
貴女
貴女
運ぶぞ
不死川玄弥
不死川玄弥
はい
隊服姿じゃない雪柱様は、本当に綺麗で、町一番の美人と呼ばれそうな、ごくごく普通の人に見える。

もし、雪柱様は尼宮家に産まれなくて、普通の家庭に産まれて、両親に愛されて普通に育って、一途に愛してくれる男性と出会って、結ばれて、幸せに暮らしているのだろうか。

あの日、あの話を聞いてから、俺は雪柱様に幸せになってほしいと願い続けている。
そして、今の雪柱様を幸せに出来るのは兄貴なんじゃないか、とさえ思っている。
俺の思い込み、妄想かもしれない。
けれど、兄貴の雪柱様を思いやる気持ちも、雪柱様の兄貴に対する雰囲気も、嘘なんかじゃないんだ。
だから
貴女
貴女
考え事する暇があるなら、動け
不死川玄弥
不死川玄弥
す、すいませんっ
だから………どうか…………いつか、いつでもいいんです。貴女が心の底から笑える日が来たなら、思いっきり笑って下さい。
不死川玄弥
不死川玄弥
やっぱり、笑顔の方がいいと思います
貴女
貴女
やだ
不死川玄弥
不死川玄弥
ははっ…わかりました
貴女
貴女
……兄弟揃って、変な奴だな
不死川玄弥
不死川玄弥
ありがとうございます

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