小さい頃の記憶だった。
俺は弱かった。女の子よりも弱かった。
弱くて、泣き虫で、引っ込み思案な俺だったが強くなりたかった。
どうやったら、強くなれるの?
僕でも、強くなれるかな。
そ、そうだよね。
うん、僕頑張るよ。だから、友達になってくれる?
え?
ありがとう、あなた。
うん。
死ぬほど鍛えるしかないよ、真菰。
俺も死ぬほど鍛えたから。
おいおい、錆兎。またあなたに勝負を挑んだのか?
俺に勝てないのに、俺より強いあなたに挑んだら駄目だろ。ほら、傷の手当するぞ。
義勇、もっと自信を持て。お前なら大丈夫だ。
鱗滝さん、厄除の面をありがとうございます。試験、必ずあなたと共に受かって戻ります。
お前の判断が……正しかった、逃げろ……!ここは俺が食い止める……!!お前は受かれよ!!
あなたは強かった。
あなたは優しかった。
あなたは可愛らしかった。
あなたは美しかった。
あなたは俺を友達と呼んでくれた。
あなたは俺が死ぬのを悲しそうに泣いてくれた。
あなたは俺の全てだ。
あなたは俺の光だ。
あなたは俺のものだ。
何人たりとも、触れさせてたまるものか。
鈴の音を鳴らし、立ち去った。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!