第36話

念じるみたいに。
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2020/03/02 05:03
同じく試験を受けた人がいるって聞いたのは、
出る前にもらった義勇さんからの手紙だった。
冨岡義勇
冨岡義勇
炭治郎、これを道中や休憩中に読んでくれていることだろう。この手紙は、あなたさんの昔についての手紙だ。
あなたさんが試験を受けた日、他にも試験を受けた人は2人いた。真菰姉さんともう1人…、神代敢カミシロイサムという奴がいた。
そいつは、錆兎が尊敬する人でこの人が鬼殺隊に入ったなら柱になるだろうと言われた人だった。
だが、この人は死んだ。
あなたさんを庇って死んだそうだ。
あなたさんとは同い歳でいつも切磋琢磨と修行をしていたと鱗滝さんも言っていた。俺はこの人と直接話したことはないが、あなたさんにとってもいい仲間だったはずだ。

何故、今この話を手紙にしたかと言うと、目撃情報があったからだ。
神代敢は常に、女物の簪をした男だがその簪はこの世にたった一つしかない簪。
鬼に喰われた時に、簪も喰われたはず。
その簪をつけた長髪の男が、今回の任務先の町に突然現れたらしい。
一応、炭治郎に伝えておきたかったが、あなたさんにだけは伝えるな。

あの人は、試験を境に大きく変わってしまった。
元々口数も表情の変化も少ない人が、全てなくなってしまった。俺は、その男が原因だと考えている。

ましてや、死んだはずの男が目撃されているのはおかしい。衣服屋の娘が消息をたち始めた頃と重なっている。
十分気をつけてくれ。
神代敢の特徴を絵にしたためて見たから、覚えておけ。

気をつけるんだぞ、あの人は強い。
それで手紙は終わっていた。
もう1枚に絵が描かれてるそうだから見てみたが。
竈門炭治郎
竈門炭治郎
こ、これは……なんというか、義勇さん……画伯……
いや、味のあるいい絵なんじゃないか!?
なんて言い聞かせてると、あなたさんと玄弥の化粧が終わったのか出てきた。
竈門炭治郎
竈門炭治郎
あ、あなたさん!玄弥、おつか……れ………
貴女
貴女
どうした、竈門炭治郎
不死川玄弥
不死川玄弥
炭治郎、言うな。わかる
あなたさんは、とてつもなく美しくなっていた。
化粧でここまで変わるものなのか?
肌が白いから、赤い口紅がとても綺麗に見える。
宇髄天元
宇髄天元
俺はほとんどやってねぇんだよ、こいつの元が派手にいいからこうなった
竈門炭治郎
竈門炭治郎
なるほど……
宇髄天元
宇髄天元
おら、行くぞ
竈門炭治郎
竈門炭治郎
はい!
不死川玄弥
不死川玄弥
は、はいっ
貴女
貴女
動きにくい…
袴が歩きにくいらしく、ものすごく嫌そうな顔をしているあなたさん。
竈門炭治郎
竈門炭治郎
俺がおぶりましょうか?
貴女
貴女
は?
竈門炭治郎
竈門炭治郎
歩きにくいですよね?
貴女
貴女
……いい、歩く
宇髄天元
宇髄天元
竈門、お前扱い上手いな
竈門炭治郎
竈門炭治郎
???
不貞腐れたあなたさんは、俺を無視して外に出る。
宇髄天元
宇髄天元
日輪刀は俺と竈門で預かっておく。それとあなた、お前は新しく開く衣服屋の娘で、不死川はお前の弟だ。いいな?
貴女
貴女
なにがだ
宇髄天元
宇髄天元
顔面を取り繕えろって言ってんだよ。愛想良くしろ、町に溶け込め
貴女
貴女
……
宇髄天元
宇髄天元
思い込め、自分さえも騙しきれ。いいな
宇髄さんがあなたさんの額に人差し指を当てる。
まるで念じるみたいに。
宇髄天元
宇髄天元
やれるな
貴女
貴女
やるしかないんだろ、やるよ
宇髄天元
宇髄天元
よく言った!不死川、お前は内気な弟だ。大人しく話さず、あなたの後ろひっついとけ。絶対離れるな
不死川玄弥
不死川玄弥
はいっ
絶対離れるな、これはあなたさんを1人にするなって事なんだろう。
鬼は神出鬼没、どこから現れてあなたさんを攫うか分からないからな。
宇髄さんには、義勇さんからの手紙のことを伝えた方がいいかもしれない……。
あなたさんと玄弥は、少し距離を置いて歩く。
2人が新しいお店の中に入ったのを確認してから、宇髄さんにさっきの手紙のことを話した。
宇髄天元
宇髄天元
なるほどねぇ、女物の簪をつけた死んだはずの男…
竈門炭治郎
竈門炭治郎
はい。何かあるような気がしてます
宇髄天元
宇髄天元
そうだな、そいつの特徴を覚えておけ
竈門炭治郎
竈門炭治郎
はいっ
宇髄天元
宇髄天元
行くぞ
あなたさん、玄弥、どうか無事に任務を終えてくれ!
2人に危害が及ぶ前に、俺と宇髄さんで終わらせる!

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