まったく、困ったものですね。
私が任務だったらどうするつもりだったのでしょう。
まあきっと、そんなことさえ見越していたのでしょうね、貴女は……。
貴女はそういう人ですから……。
鬼の喉を突き、毒を流し込む。
崩れていく鬼を見て、辺りを見渡す。
怪我人は町にはいなさそうで何よりです。
コイツ、まだ動くの?
血鬼術を使えるのか…!
周りはいつの間にか、暗闇の世界になっていた。
いや、暗闇ではない。
自分自身の手が見える、ここは暗闇ではない証拠。
これは、幻覚か何かの類の血鬼術…。
能力は?攻撃性は?効果範囲は?
何もわからないから、動きようがない。
いや、動いてはダメ…。
目の前には、死んだはずの姉・胡蝶カナエがいた。
蟲の呼吸、蝶ノ舞
姉さんを刺し穿つ。
倒れるそれの頭を踏みしめ、
頸に刃先を突き立てる。
すると、闇は晴れていった。
すると、違う方向から鬼が飛んでくる。
鬼と一緒に悲鳴嶼さんも来る。
悲鳴嶼さんと戦ってたんですね、可哀想に。
それだけ伝えてとどめを刺す。
刀を納めて、笑う。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!