青柳くんに手を引かれるまま、私は学校を飛び出した。
途中すれ違う先生に止められながらも青柳くんは
止まらなかった。
嗚呼、巻き込んでしまった。
青柳くんだって家のことが大変なはずなのに
私一人のせいで、こうやって今までちゃんと
生きてきた青柳くんの人生をめちゃくちゃにしてしまう
どうしよう、どうしよう……
前を走る青柳くんがそう言った。
私の考えてることはお見通し、ってことかな
きっと学校から連絡が来たのだろう
ポケットの中で携帯が振動を始めた。
お父さんかな、お父さんだろうな
きっとすぐに捕まってしまう。
お父さんのことだ、きっと家の力全てを利用して
私を探しに来る。
でも、ほんの少しだけ。
せめて、今日だけでも。
君と、一緒にいたいよ。
______________ 青柳くん。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!