第16話

おもいあふれ
278
2021/09/26 15:55
恵は引っ越した。
昼に離れると言っていたから見送るつもりだった。



ーLINEー
昼には出るけど、卒業式また会えるから
明日はゆっくり休んでろ。
あなた

了解。
じゃ、卒業式にね!

恵は前を向いてる。
お互い違う道を歩くのは分かってるけど
淋しくなってきた。

でも、それを分かっているから恵は
帰りが遅くても、どんなに疲れていても
私を気付かう連絡をくれる。
その優しさが、胸をしめつける。
ユウキ
ねーねー、
二人は彼とどこまで進んだの???
アキ
はい~?
久し振りに、3人で遊ぶ。
ユウキはこの手の話しが大好き。
ユウキ
キスくらいしちゃってるでしょ?
アキ
ユウキは別れたアイツとしたの?
ユウキ
うん。
あなた

え!そうだったの!?

ユウキ
うん。付き合って早い段階で。
あ、恵とはしてないよ。
アキ
余計だし。
あなた

ハハハ…

アキ
ユウキ、キス以上…しちゃってたり?
ユウキ
ううん。それはしてない。
アキ
それはしてない。ハハ
あなた

その先って怖いよね、なんか。
でも、ユウキはクリアしてると思ってた〜

ユウキ
ざんねーん。さすがにあたしも怖いハハハ
あなたは?恵と…
アキ
知ってる男だけに、リアルだわ。
あなた

…まぁ、///キスは…

ユウキ
しちゃったの〜?
あたし、できないって断られたのに〜
アキ
え"、あんた迫ったの?
あなた

え、迫ったの?

ユウキ
あ、うん。キスしたかったから。
でも、まだ早いとかなんとか言われて。
あなたごめんっ。
アキ
えー、意外。そんな事ゆーんだぁ。
あ、ごめん。
あなた

ははっ。謝んなくていいし。

アキ
え?あなたは迫ったの?
あなた

///いや、迫っては、ないな…

ユウキ
本当に好きな人としたかったんだね。
恵ちゃんっ。
アキ
あなた大事にされてるじゃんっ。
あなた

///ども。
てか、アキは〜?

大事にされてる事は、分かってた。
優しいから、辛いんだ。
卒業式、家の前まで恵が迎えに来てくれた。
あなた

今日、五条さん来るの?

そぅみたいだ。多分ギリギリじゃないかな。
あの人、デカいから俺らより目立つしな〜
久し振りに制服姿の恵を見る。
今日でこの町で恵と会うのは最後だ。

校門まで行くと、在校生の数人が恵に声を掛けてきた。
あまり友達とつるまないタイプだけど、
ちょっとヤンちゃ気質だからか、割と目立つ彼。
下の女のコからは人気があった。
あなた

卒業式終わったら、
ハダカにされるんじゃない?
下の子らに狩られるね。フフフ

///狩られるわけねーだろ。ばーか///
隣りにいる私は、ちょっと鼻が高かった。

無事卒業式が終わり、案の定
恵は在校生に囲まれていた。
五条
よっ。
あなた

五条さん。
…なんか、雰囲気違いますね。
ハハ別人〜大人〜カッコいいですねっ。

五条
うん。何着てもカッコいいんだよね〜。
恵、意外と人気あんだね。
アイドル並みじゃん。へー意外だな。
あなた

ハハ、そーですよね。
あ、…コレ。

五条
ん?あ、預かるね。
ホントにそれでいいの?
あなた

コクンはい。

引っ越し準備の日、私は五条さんにお願いをしていた。

これから呪術師として歩き出すのに、私のせいで
恵の持つ良心が仇となるかも知れないという事。
恵の使命を理解したいという事。
私自身、もっと精神的に強くなりたい事。

結局、子供な私が恵を、二人の関係を
ダメにするイメージしかできなかった。
辛くなっていた。
だから、リセットする為に恵から離れる事にしたんだ。




ー恵宅ー
五条
…そっか。
キミは十分大人だよ。恵を良く分かってる。

でもー、今日ココに僕が来てなかったら
どうしてたの?
あなた

(首を振る)
五条さんは絶対居るって思ってた。

五条
フフーン。
もう少し早くキミとこうして
話しができてたら、
スカウトできたんだけどねっ。
あなた

フフフ、多分断ってます。

五条
人助けできる、
カッコいい仕事だと思うけど?
あなた

(首を振る)
私は、恵のファンでいたいから。

五条
ハハハ、恵は幸せ者だね。
直接話したかったけど、
私が大泣きして話せなくなると思うし、
最後まで恵の前では、元気でいたかった。
だから、五条さんに手紙を渡してもらう事にした。
///行くぞっ。
あなた

狩られなくて良かったねハハハ

うっせーな。
五条さんは?さっきいただろ?
あなた

ん。中々終わらなそうだからって、
先に帰ったよ。

そーか。
あなた

もぅ、帰る?

いや、まだ大丈夫だ。


最後に河原へ行こっか。



…………………………………………………………
しばらく川の流れを見つめてた。
…これからなんだが、
このままお前とは付き合って行きたい。
あなた

…一人任務ができるようになるんだよね?

ん?あぁそうだな。出張もあるらしい。
あなた

へー。いいなぁ。色んな所行けるんだね。

ハハ旅行じゃねーんだよ。
あなた

そっか。観光できないのか〜…
あ、見てみて、川面キラキラしてる。

恵がチョコと戯れてた光景を思い出した。
その時の川面もキラキラしてたな。
今は制服を着た私と恵がここに居るね。

だめだ、泣く。
オレの話し、そらすの下手かよ。
あなた

ハハハ〜・・・(立ち上がる)

訳も無く歩きだす。ううん、訳はあった。
泣き出しそうだから。
今日で最後だから。
付き合って行きたい、って言われたから。
あなたっ。おい。(腕を掴もうとする)
その手を振り払って駆け出す。
逃げられないのは分かってるのに。
高架下の柱まで走って、恵に手を掴まれた。
何で逃げんだよ。
あなた

ハーハーハー・・・

こっち向けよ。
あなた

(背中を向けたまま)やだ。

おいって。あなたっ。
あなた

やーだっ。

こっち向けって言ってんだろっ(振り向かせる)
泣いちゃだめ。
あなた

・・・(下を向いたまま)

…さっきオレが言った事…イヤなのか?
泣いちゃだめ。

私の両肩を掴む手に力が入る。
その力のせいで、私の力が抜けていく。
あなた

ー・・・ポロポロポロ

なんか言えよ!
ごめん、今だけワガママ言わせてね。
あなた

…行かないで…

泣かないつもりでいたのに
普通にバイバイしたかったのに
困らせたくなかったのに
(抱きしめる)・・・ごめん。
そう言われるのも知ってる。
でも、それで良かった。
あなた

・・・

そう言って恵は、私の涙を親指で拭ってくれた。
・・・でも、お前が好きなんだ。
あなた

・・・恵、わたし…

唇が重なった。
私の言いたかった事が通じた気がした。
その瞬間。気持ちが少し楽になった気がした。
長く、あたたかいキスだった。

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