第3話

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2021/08/17 20:31



事務所との契約を済ませ、みんなで楽しくゴハンを食べて、それでも興奮がおさまらなくて、しばらくしゃべっていた。

終電の時間を気にして、ひとり、またひとり、と帰っていく。

最後に俺らふたりが残された。

何となく分かれ難くて、カラオケ屋に誘った。


「何歌う?」


「うん……」


ボンヤリと焦点の合わない目をして、ぐったりと椅子に座っている。


「どした?
やっぱり疲れた?」


「ううん、なんか、なんか、夢みたいやな、って。
僕なんかが……なんか、目が覚めたら全部夢だったりせえへんかな」


笑いながら言う姿が儚げで、胸の奥がギュッとなった。

思わず顔を寄せて、音を立てて彼の下唇を吸ってみる。


「ちょ…っ」


驚いた顔に満足して離れようとしたのに、彼の両腕が背中に回るから、こっちがあわててしまった。
抱かれると、どうしても身長差を感じてしまう。

びっくりして開いた口に、するりと入ってきた舌が優しく動いて、俺を味わっていく。


(こいつ……っ)


なんでこんなキス、うまいんだよ。


悔しくなって、俺も舌を使ったから、キスがどんどん深くなっていく。


やばい、と思った途端、シャツの下から彼の手が入ってきた。

乾いた肌に彼の熱い手が直接触れてくるから、体の奥からぞわぞわする刺激が駆け抜ける。
中心にどんどん熱が溜まっていく。


「…ちょ、おっと、ストップ、ストップ」


「始めたの自分やで?」


「わかってるよ! 
でもさ、場所変えよ?
カラオケ屋って、見張りのカメラ入ってたりするし……」


何だか急に恥ずかしくなった。
顔が熱くてたまらない。


「そやな。ほなうち来る?
こっから近いし」


「……夢じゃないって、実感した?」


「続きさせてくれたら実感できそう」


こいつ!
こいつって、こんなヤツだったのか?


焦る俺を見ながら余裕に笑って、


「ほな行こか」


アウターと、部屋のレシートをつかんで立ち上がる。


「なあ?」


「ん?」


「これから、俺たちどうなるか、先の事はわからないじゃん。
ケンカして離ればなれになる事だってあるかもしれないじゃん?

でもさ、今ここで。

おまえと出会えて、こうして一緒にいられる喜びを、花束みたいに胸に抱いて、これからもずっとやっていきたいなって、俺、思うんだ」


俺の言葉を聞いて、一瞬泣きそうな顔をして、花が開くように笑顔になった。


「ありがとう」


彼の笑顔に嬉しくなって立ち上がり、アウターをつかんで彼の手を取った。


「早く行こ」


「待って?」


「なんだよ。いらないのかよ?」


「いるよ! いります!」


ふたりで笑い合った。








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