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第13話

Lonely One ④
146
2021/04/30 13:50




       ☆



きらきらが戻ってきた。

それはそれで、すごくウザい。
いるだけで、とにかくきらきら振りまいて、黙ってたってなんかうるさい。
けど、アイツはやっぱりそうじゃないと。



社食で2人で、美味しくお昼を食べていた。
今日は回鍋肉定食。
ごはんは2人とも、もちろん大盛り。


「ねー」


ん?と目で返事をする。


「俺って電気みたいの発してる?」


「電気?」


「俺が触ると痺れるみたいになるって言うからさぁ」


「どれ?」


手を出したら、おっきい両手で包み込むように握られた。

お互いに、相手の目を見つめる。
しばらくそのままでいたけど、


「悪い。
なんも感じない」


って言ったら、手を離して


「だよなー、変だと思った」


苦笑するから、


「僕、おまえとキスしても、なんも感じないと思う」


追い討ちをかけた。

アイツは笑って、


「俺も」


って言った。





彼って、僕が触っても痺れたりするんだろうか。

ダンスで何度も触ったし、なんならハグもし合ったし、そういや、手を握り合ったりしてる。

でも、そんな反応起きたこと、1度も無い、と思う。

触れると痺れるなんて。
そんなこと、ほんとにあるのかな。

あ、大事な質問し忘れた。

おまえはどうなんだよ?って聞けば良かった。

おまえも、彼に触れられると痺れるの?って。







       ☆ ☆



「あの、もしかして。
もっと強い刺激が欲しかった?」


「なんでだよ」


胸の突起に触れながら、なんとなく聞いてみる。
散ってたあざは、もうすっかり薄くなって、よく見ないとわからない。


「なんとなく。
その方が好きなのかな、って」


キスを落としながら吸い上げるけど、あざになる事はない。
よっぽど強く吸わなくちゃ。


「いや、も充分…今だってシゲキ強い」


どういうこと?

こんな敏感なのに、アザが付くほどハードプレイしてた意味が不明。

試しにカジカジと歯を立て、強く吸ってみた。
小さな粒だから、うまく吸えない。
結果、似たようなあざができる。


「痛いから、やめろ」


俺を自分から剥がそうと、両腕を動かしてきた。
顔を見たら、涙がにじんでる。
かわいそうで、かわいくて、心が暴れる。


「こういうのがいいのかなって」


「やだ、いつもの、優しいのがいい」


「他の人には強くさせるのに?」


「あれは……。
何もかも全然刺激が足りなくて、俺がもっとって……言い続けたから。
それでも足りなくて、ちゃんと勃起できなくて……結局うまくいかなかったから……。
もうしないから、許せよ……?」


俺が怒ってるって思ったのか、悲しそうな顔になる。
かわいそうで、かわいすぎて、ほんとに意味わかんない。

俺が知ってる彼は敏感で、触るとすぐ固くして、うっとりと幸せそうにしてくれるのに、そうならない彼が想像できないや。

赤く腫れてしまったそこを避けて、もうひとつの粒を撫でる。
それだけで、表情が溶けた。


「気持ちいい。
すごく」


乱暴にされるの好きな人もいるだろうけど、する方だって大切にしたいんだから、優しいのがいいってわかってホッとする。

彼は、剥がそうとしてた俺をあらためて抱きしめて、できるだけ密着してきた。
熱い塊が存在を主張して、俺に当たる。

しばらく触れてたら、もぞもぞと腰を動かしてきた。


「挿れて?」


「え、だめだよ?
明日ダンスじゃん」


「…………うん」


すごく残念そうな顔を見せたあと、胸に触れてた俺の手を取り口元に持っていき、飴をしゃぶるように舐めはじめた。
唾液をたっぶりまぶしながら見上げてくる。


「じゃ、指だけ」


うーわ、可愛いな。


「おまえのは、俺が」


口でしようとして動こうとするから、急いで濡らしてくれた指を後ろに当てる。

今、俺、顔を見ながら触りたいから。

最初は抵抗を感じたけど、すぐに解れて、俺の指を飲み込んだ。
俺を見つめる目が閉じられ、眉が寄る。

もうだいたいわかった、少し奥にある彼の快感のポイント。


「あ…っ」


小さく声を漏らすと、苦しそうにしがみつくから、空いてる手で前にも触る。
リズムを刻むと、


「や、やめろ。
終わりたくない、から」


かわいいな。
もちろん、やめないよ?

大好きの気持ちが膨れ上がり、彼を愛しむ気持ちでいっぱいになって、トリガーを引くように、中の指を動かした。

ぐん、と体に力が入り、爆ぜてしまう時の追い詰められた表情を、見逃さないようにしっかり見つめた。
震えるまつ毛の様子まで胸にきざむ。


「あー、やめろって言ったのに」


声音に悔しさがにじむ。


「終わりたくなかったのに」


「なんで」


「一緒にイキたかったからに決まってんだろ」


俺だけじゃヤなんだよ、おまえも悦くなきゃ、って言いながら赤くなるから、やっぱりかわいくて、愛しくて、心が暴れた。

キスして。
味わって。

しみじみと幸せを噛み締める。



もしかして、俺、めちゃくちゃ愛されてる?

彼が言ってる事を信じるなら、俺の愛撫にだけそんなに感じるなら、それって、ただの反射じゃないじゃんか。
体の相性いいのもあると思うけど、好きの気持ちがあるからこそだよね?

その事に思い至ると、嬉しさでどうかなりそうだった。



ほんとなら。
重なることもなかったのに、出遭えた魂。

ずっと大切にするね。
ふたりでゆっくり、色んなダンスを楽しんでいこうね。

光あふれる昼も。

星ふりそそぐ夜も。



何度でも。






〈〈終〉〉




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