☆
きらきらが戻ってきた。
それはそれで、すごくウザい。
いるだけで、とにかくきらきら振りまいて、黙ってたってなんかうるさい。
けど、アイツはやっぱりそうじゃないと。
社食で2人で、美味しくお昼を食べていた。
今日は回鍋肉定食。
ごはんは2人とも、もちろん大盛り。
「ねー」
ん?と目で返事をする。
「俺って電気みたいの発してる?」
「電気?」
「俺が触ると痺れるみたいになるって言うからさぁ」
「どれ?」
手を出したら、おっきい両手で包み込むように握られた。
お互いに、相手の目を見つめる。
しばらくそのままでいたけど、
「悪い。
なんも感じない」
って言ったら、手を離して
「だよなー、変だと思った」
苦笑するから、
「僕、おまえとキスしても、なんも感じないと思う」
追い討ちをかけた。
アイツは笑って、
「俺も」
って言った。
彼って、僕が触っても痺れたりするんだろうか。
ダンスで何度も触ったし、なんならハグもし合ったし、そういや、手を握り合ったりしてる。
でも、そんな反応起きたこと、1度も無い、と思う。
触れると痺れるなんて。
そんなこと、ほんとにあるのかな。
あ、大事な質問し忘れた。
おまえはどうなんだよ?って聞けば良かった。
おまえも、彼に触れられると痺れるの?って。
☆ ☆
「あの、もしかして。
もっと強い刺激が欲しかった?」
「なんでだよ」
胸の突起に触れながら、なんとなく聞いてみる。
散ってたあざは、もうすっかり薄くなって、よく見ないとわからない。
「なんとなく。
その方が好きなのかな、って」
キスを落としながら吸い上げるけど、あざになる事はない。
よっぽど強く吸わなくちゃ。
「いや、も充分…今だってシゲキ強い」
どういうこと?
こんな敏感なのに、アザが付くほどハードプレイしてた意味が不明。
試しにカジカジと歯を立て、強く吸ってみた。
小さな粒だから、うまく吸えない。
結果、似たようなあざができる。
「痛いから、やめろ」
俺を自分から剥がそうと、両腕を動かしてきた。
顔を見たら、涙がにじんでる。
かわいそうで、かわいくて、心が暴れる。
「こういうのがいいのかなって」
「やだ、いつもの、優しいのがいい」
「他の人には強くさせるのに?」
「あれは……。
何もかも全然刺激が足りなくて、俺がもっとって……言い続けたから。
それでも足りなくて、ちゃんと勃起できなくて……結局うまくいかなかったから……。
もうしないから、許せよ……?」
俺が怒ってるって思ったのか、悲しそうな顔になる。
かわいそうで、かわいすぎて、ほんとに意味わかんない。
俺が知ってる彼は敏感で、触るとすぐ固くして、うっとりと幸せそうにしてくれるのに、そうならない彼が想像できないや。
赤く腫れてしまったそこを避けて、もうひとつの粒を撫でる。
それだけで、表情が溶けた。
「気持ちいい。
すごく」
乱暴にされるの好きな人もいるだろうけど、する方だって大切にしたいんだから、優しいのがいいってわかってホッとする。
彼は、剥がそうとしてた俺をあらためて抱きしめて、できるだけ密着してきた。
熱い塊が存在を主張して、俺に当たる。
しばらく触れてたら、もぞもぞと腰を動かしてきた。
「挿れて?」
「え、だめだよ?
明日ダンスじゃん」
「…………うん」
すごく残念そうな顔を見せたあと、胸に触れてた俺の手を取り口元に持っていき、飴をしゃぶるように舐めはじめた。
唾液をたっぶりまぶしながら見上げてくる。
「じゃ、指だけ」
うーわ、可愛いな。
「おまえのは、俺が」
口でしようとして動こうとするから、急いで濡らしてくれた指を後ろに当てる。
今、俺、顔を見ながら触りたいから。
最初は抵抗を感じたけど、すぐに解れて、俺の指を飲み込んだ。
俺を見つめる目が閉じられ、眉が寄る。
もうだいたいわかった、少し奥にある彼の快感のポイント。
「あ…っ」
小さく声を漏らすと、苦しそうにしがみつくから、空いてる手で前にも触る。
リズムを刻むと、
「や、やめろ。
終わりたくない、から」
かわいいな。
もちろん、やめないよ?
大好きの気持ちが膨れ上がり、彼を愛しむ気持ちでいっぱいになって、トリガーを引くように、中の指を動かした。
ぐん、と体に力が入り、爆ぜてしまう時の追い詰められた表情を、見逃さないようにしっかり見つめた。
震えるまつ毛の様子まで胸にきざむ。
「あー、やめろって言ったのに」
声音に悔しさがにじむ。
「終わりたくなかったのに」
「なんで」
「一緒にイキたかったからに決まってんだろ」
俺だけじゃヤなんだよ、おまえも悦くなきゃ、って言いながら赤くなるから、やっぱりかわいくて、愛しくて、心が暴れた。
キスして。
味わって。
しみじみと幸せを噛み締める。
もしかして、俺、めちゃくちゃ愛されてる?
彼が言ってる事を信じるなら、俺の愛撫にだけそんなに感じるなら、それって、ただの反射じゃないじゃんか。
体の相性いいのもあると思うけど、好きの気持ちがあるからこそだよね?
その事に思い至ると、嬉しさでどうかなりそうだった。
ほんとなら。
重なることもなかったのに、出遭えた魂。
ずっと大切にするね。
ふたりでゆっくり、色んなダンスを楽しんでいこうね。
光あふれる昼も。
星ふりそそぐ夜も。
何度でも。
〈〈終〉〉
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!