第2話

壱 ー帰還ー
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2019/10/23 09:37
ボロボロの状態のまま歩き疲れて早数ヶ月…
見覚えのある建物が見えてきた。

あの建物の記憶と共に、愛らしい顔をした3人の幼女と、2人の少女そして、1人の美女が頭をよぎる。



はぁ…やっと帰ってこれた…




高まる興奮を抑えつつ、棒のような足を先ほどとは比べ物にならない速さで、前に出していく。
ボロボロの隊服。
傷だらけの体。
鳴り止まない腹の虫。
今にも倒れそうだ。
何も考えられない。


何故こうなったのかって?
それは…



遡ることちょうど数ヶ月前、私が鬼殺隊員になって初めての夏。
鬼殺隊の仕事も慣れてきたころの任務。内容はこうだった…ハズ…

『烏賀陽あなた~ 指令ヲ伝エル 東北ノ村ヘ向ヘ ソコデハ毎夜毎夜村人ガ姿ヲ消シテイル ソコニイル鬼ヲ見ツケ出シ撃ツノダ』 

だった…ハズ…
初の一人での任務。いろんな感情が心の中でまざる。
準備を終えた私は、お世話になった蝶屋敷の皆さんに挨拶をすませ、鎹烏と現地へと向かった。

村に到着したのは歩きはじめて3日目の夜。すると私の前に例の鬼が現れた。
これ以上の被害が出る前にと、私はすぐにその鬼を斬った。


任務が思っていたよりもすぐに終わり、まだ元気とやる気で満ち溢れていた私は、近くで鬼の情報がある村すべてに向かいそれを全て撃った。

そんな私に村人たちは、めちゃめちゃ美味しいご飯と、めちゃめちゃ寝心地の良い宿を提供してくれた。


そんなことが続き、三ヶ月。
本部を目指していた私はいつのまにか、本部を通り過ぎ、かつていた東北の反対側。
つまり、南の方にいることに気がついた。

もっと早く気がつけばよかったと後悔しつつ方向を変え、本部に向かって進んだ。

帰りの道には鬼の情報もなく、今までもらってきた食料を食べて飢えをしのんできた。
だがある日、その食料が底をついたのだ。
旅の途中で荷物になってしまうということもあり、多く持たせてくれようとした食料を「少しでいい」と断っていたのだった。



そして絶望が始まった。
自分が方向音痴だと気が付いたのは、絶望が始まってから数分後。
同じ道を何度も通っていたのだ。相棒である鎹烏の眞鳥まとりがいない中、私は必死に本部につくことを信じて、願いながら進んだ……


そして、今に戻る。
先ほど本部に戻り報告をしてきたところ皆、私を見ると目に涙を浮かべ「よくご無事で…」というのだ。

みんなぁぁぁぁああああ‼︎
私は生きてるよぉぉぉぉぉぉぉぉおおおお‼︎

見覚えのある建物の門をくぐり、玄関へと向かう。そして扉を開け、今にも張り裂けそうな肺に大きく息を吸い込みこういった。

「ただいま戻りましたぁぁぁぁああああ‼︎」

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