いつも、同じ。
何も変わらない。
今までどうやって息をしていたのか…
分からなくなる。
私が芸能界に入ったきっかけは
家族の勧めだった。
家族いわく、たまに活動して
私がすこしでも楽しんでくれたら
良かったらしいのだけど、
案外長く続いた結果、今になる。
私には本当の両親がいない。
今の両親は、私が施設にいた3歳の頃に
引き取ってくれて今はとても
大切にしてもらっている。
人とはすこし違った境遇で、
小さい頃は無表情だったことも多くて、
心配した父と母が私に
生きる意味を与えたくて今の仕事を
始めさせたらしい。
頑張ったら褒めてくれて、
みんながかわいいといってくれて…
とっても嬉しかったことを今も覚えている。
家族みんな、しんどくなったら
いつでも帰っておいで!
楽しいと思えるときまでは
思いっきり一生懸命やってきなさい!
と言ってくれている。
私が今でも芸能界にいるのは
幼い頃感じた、
あの楽しさを…あの気持ちを…
もう一度見つけたいから。
今日の午前の撮影は、
私がもう何度も
お仕事をさせてもらっている、
10代~20代の若い女の子に特に人気の
化粧品会社【Syu-No】の新作リップの宣伝。
さすがにみんなに好かれるなんて
ありえないことで、
誰かは私のことを嫌っている。
同業者なら尚更で、
一部に敵対視されてるのも知っている。
そうしてなんだかんだ考えているうちに、
控え室に着いた。
ゆいさんの、可愛いメイクと服の
おかげで、撮影は無事に終わった。

午後のお仕事も
いつも通り順調に進んでいった。
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ひなた園は、私が3歳まで育った
児童養護施設のことで、
園を出てからも私は頻繁に
遊びにいっている。
兄弟のような子もたくさんいて、
今でも私の帰る家でもある。
《《ガチャ》》
私の心に小さな何か生れそうな気がした。