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第2話

最後の年に思い出を作るために
私が生徒会役員に立候補したのは、自分に自信をつけたかったから。


中学までの私には、何も誇れるものがなかった。


飛び抜けて成績がいいわけでもなく、運動能力も平均的で、人と話すことだってうまくない。


その上、クラスで浮いている。


そういう悩みを克服すべく、一年生の時、生徒会役員に立候補して無事やり遂げたところまではよかった。


二年目も継続しようとした結果、まさかの『あみだくじ』で生徒会長になってしまったのだ。


辞退を申し出たけれど、響希くんが「雪乃だったらできると思うよ」と背中を押してくれたから、今がある。



彼は、私とは正反対とも言えるほど、爽やかで笑顔の似合う好青年。


真面目だけれど、いわゆる堅物かたぶつとは違って柔軟性もあって。


私が『普通の女の子らしい高校生活』を送りたいと願っていることも知っているから、さっきみたいにそっと助けてくれる、優しい人。


実際は、女子の嫉妬も相まってうまくいっていないけれど、それでも嬉しい。
黒須 響希
黒須 響希
雪乃……? 大丈夫?
早乙女 雪乃
早乙女 雪乃
あ……。
うん!

ぼーっとたたずむ私を、響希くんは心配してくれた。
早乙女 雪乃
早乙女 雪乃
(やっぱり、好きだな……)

生徒総会の次は文化祭。


これも生徒会主導とも言えるイベントで忙しいけれど、せめて高校最後に好きな人との思い出を作りたい。
早乙女 雪乃
早乙女 雪乃
(嫌われていない、とは思うけれど……)

好かれている自信はもちろんない。


だけど、動かなかったら何も始まらないんだ。


『告白』の二文字を胸に刻み、マイクのコードを巻きながら、私はひとり頷いた。
早乙女 雪乃
早乙女 雪乃
(呼び出すなら、どこがいいだろう? みんなに見られないところって……)

そういった考え事をしていたせいだろう。


地下倉庫に向かう途中、畳みかけで歪んでいた床のマットに、私は足を引っかけてしまった。
早乙女 雪乃
早乙女 雪乃
わ、わ……!

一歩、二歩、前のめりになって進んだ後、マイクを取り落とす。


そのまま顔面から転びそうになった瞬間、私の体は空中でピタリと止まった。
早乙女 雪乃
早乙女 雪乃
え?

誰かが支えてくれたのだと分かって、息を呑む。
黒須 響希
黒須 響希
危なっ……間に合ってよかった。
ほんと、大丈夫? 疲れてる?
早乙女 雪乃
早乙女 雪乃
響希くん……。
あ、ありがとう。
大丈夫!

一瞬だけど、響希くんに抱き留められた。


その感触と体温に理解が追いつかず、私はぽかんと口を開ける。
黒須 響希
黒須 響希
雪乃にはこういうおっちょこちょいなところもあるって、みんな知ってくれたらいいのにな?

響希くんは笑って、私の背中を軽く叩き、そう励ましてくれる。


どうやら、さっきのクラスでの事を気にかけてくれているらしい。
早乙女 雪乃
早乙女 雪乃
(やっぱり、この人……優しいな)

ときめきと同時に、自然と笑みが零れた。
水瀬 悠
水瀬 悠
…………。
なー、会長。
スタンドってどこにしまうの?
早乙女 雪乃
早乙女 雪乃
あっ、それもマイクと一緒だったかな
水瀬 悠
水瀬 悠
じゃあ、これは俺が持って行くな
早乙女 雪乃
早乙女 雪乃
えっ。
ありがとう……

水瀬くんが床に落ちたままのマイクを拾って、すたすたと去って行く。


その横顔は、いつもの余裕のある笑みではなく、神妙なもので。
早乙女 雪乃
早乙女 雪乃
(なんか、不機嫌だった……?)

彼はいつも、何を考えているのか分からない。


だから、苦手だ。



***



翌日の放課後。


生徒会室に行く前に、私は響希くんを呼び出すことにした。


放送室なら生徒会役員もよく利用するので、不自然ではないし、何より防音だ。


誰にも知られずに告白するのにうってつけの場所。


【話したいことがあるので、放課後一度放送室に来てくれますか】


そんなメッセージを送って数秒後、すぐに既読がついた。


【分かった】とだけ返事が来て、いよいよ緊張で体が震える。
早乙女 雪乃
早乙女 雪乃
(思い切ったことをしてるって分かってるけど……!)

文化祭の直前は慌ただしくなるから、告白するなら早めがいい。


玉砕した時でも、時間がある分立ち直れる気がする。


そんな理由で今日にしてしまったのだけれど、ほんの少しだけ後悔した。
早乙女 雪乃
早乙女 雪乃
(あああ、どんな顔をすればいいの……!?)

思わず、入り口の扉に背を向けて立つ。


直後、ゆっくりと扉が開く音がした。


【第3話へつづく】