記憶を遡ってみれば、この二週間は生徒会役員の集まりもまばらだった。
私と悠、響希くんが揃ったのは久しぶりだ。
互いの呼び方が変わったのを彼が知らなくても、不自然じゃない。
私には、確かに友達と呼べる人は少ないし、呼び捨てにしたのは悠が初めてだ。
響希くんを煽るような悠の言い方に、私はギクリとした。
同時に、「響希が嫉妬してくれるかも」という悠の言葉を思い出す。
彼はわざと響希くんを嫉妬させようとしているのかもしれない。
とにもかくにも、心臓に悪い。
作業の手を止めたまま、悠はそう畳みかける。
その発言で、悠は響希くんを嫉妬をさせようなどとは考えていないことが、分かってしまった。
私がモヤモヤと考えこんでいると、響希くんは首を横に振って、苦笑する。
『好きな子』という言葉には、少なからず重みがあった。
響希くんにも、好きな女の子がいるのだろうか。
もしいるのなら、どんな子だろう。
後頭部をガツンと殴られたような、でも痛くない、変な感覚。
首をかしげながらも、作業は着々と進み……。
準備で使用するペンキの数の確認のため、私は美術棟の倉庫に向かうことになった。
手が空いているのが、私しかいなかったからだ。
生徒会室を離れ、廊下を歩いていると、背後から悠が足早に追いついてきた。
ぎょっとして、歩みを止める。
本当に分からなくて、ぽかんとなる。
どうして、私が謝られなければならないのか。
ばつが悪そうに言って、悠は頭を下げる。
それでも、私が謝られる意味が分からない。
【第15話へつづく】
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!