無料ケータイ夢小説ならプリ小説 byGMO

第17話

言いようのない喪失感
翌日以降、私と悠が別れたかもしれないという噂が瞬く間に広まった。


私たちが言い合っていたという目撃証言があったのと、私と悠が全く関わり合おうとしなくなったからだ。
女子生徒
ねえ、早乙女さん。
ほんとのところ、どうなの?
別れたの?
女子生徒
ばっか……!
あんた、もうちょっとオブラートに包んで聞きなよ!
早乙女 雪乃
早乙女 雪乃
…………
女子生徒
みんな本当のことが知りたいだけなんだよ。
悠くんには、なんか聞きづらいしさぁ……
早乙女 雪乃
早乙女 雪乃
…………

こういう時ばかり、彼女たちは私に関心を向けて話しかけてくる。


以前の私なら喜んでいたかもしれないけれど、こんな形で友達を作ってもむなしいだけだ。


答えたところで、それ以上関わってこようとしないと分かっているからこそ、私は何も言わない。


『氷姫』とでも、何とでも好きなように言えばいい。
女子生徒
あ、ねえ、響希くん!
響希くんは何か聞いてないの?

悠も私も何も言わないので、みんなやきもきしている。


その余波は、私と悠のどちらとも仲の良い響希くんにも向かっていた。
黒須 響希
黒須 響希
さあ。
俺も詳しくは聞いてないから、分からないんだ。
だから、事情を聞くのはほどほどにしてあげてよ
彼は笑顔ではぐらかす。


響希くんは、思慮深い人だ。


私たちが別れたことを分かっていても聞いてこないし、口にもしない。


その心配りに、私は深く感謝していた。
女子生徒
えー、うそー!
女子生徒
もう鉄壁すぎるんだけど……
文化祭の準備だけは着々と進む中、私と悠は、必要最低限の会話しかしない。


以前のような、何を考えているのか分からない悠へと戻ってしまって、参ってしまった。


それでも、ひとつだけ違うのは、私が彼を「苦手」だと思わなくなったこと。


その変化に、私と悠の間にあった時間が存在を強くする。


これでよかったんだと思いたいのに、自分を納得させようとするたびに、胸がぎゅーっと締めつけられ、泣いてしまいそうになる。



***



その日のアルバイトの帰り道も、思い出すのは悠のこと。


初めて外で待ってくれたあの日以来、仕事が終わる頃にいつも迎えに来て、家まで送り届けてくれた。


たった数回の出来事だったけれど、私にとっては貴重な『デート』の時間だったのだ。
早乙女 雪乃
早乙女 雪乃
(あ、お母さんの誕生日にお花を買うんだった)

他のことで頭がいっぱいで、忘れかけていたのを辛うじて思い出す。

黒須 響希
黒須 響希
いらっしゃいませ

見かけた花屋を訪れると、聞き慣れた声がした。
早乙女 雪乃
早乙女 雪乃
あれっ……?
黒須 響希
黒須 響希
雪乃?
バイト帰り?
早乙女 雪乃
早乙女 雪乃
うん。
なんだ、響希くんが働いている花屋ってここだったんだ

彼が花屋でバイトをしていることはずっと前から知っていたけれど、この店とは知らずにびっくりした。
黒須 響希
黒須 響希
チェーン店だからね。
前は別の店舗にいたんだ。
まあ、それはいいとして、プレゼント用?
早乙女 雪乃
早乙女 雪乃
うん。
お母さんの誕生日に、一輪挿しができるものを
黒須 響希
黒須 響希
分かった。
それならこの辺り……。
ラナンキュラスとか、母の日は過ぎたけどカーネーションとか
早乙女 雪乃
早乙女 雪乃
あ、じゃあこれをお願いします

ピンクの花びらのラナンキュラスを一輪、包んでもらった。


響希くんは、ここでも何も聞いてこない。


彼の優しさとは重々分かっているのに、私はこの不安定な気持ちを誰かに吐露したくなっていた。
黒須 響希
黒須 響希
俺、もうバイト上がるから、家まで送っていくよ。
ちょっとだけ待ってて

弱っている時に優しくされると、涙腺がもろくなるらしい。


私は耐えきれず、花を抱えたまま泣き出してしまった。


【第18話へつづく】