悠は、わざと響希くんの反応を試したらしい。
そんな高度なこと、一体どうやって、何のためにやるのだろう。
歯切れの悪い答えと、やっぱり何を考えているのか分からない悠。
でも今日は、本当に反省している様子だ。
許しを請う子どものように、しゅんとして頭を掻いている。
人間味のある反応がなんだか、おかしくなってきてしまった。
堪えきれずに笑ってしまうというのは、初めてのことかもしれない。
私が吹き出すと、いつもの逆で、悠は意味が分からないようできょとんとしていた。
ほっと息を吐いて、頬を緩めながら悠が言う。
意外な言葉に、私は笑うのを止めた。
そう言われて、私は悠の背中を思い切り強く叩いた。
図星なのと、照れ隠しもあった。
だって、悠の前で笑うようになったというのは、彼の言葉を借りれば、私は彼に心を許していることになるのだから。
痛がりながらも笑う悠を見ると、また笑えてしまう。
ふと、『心を許している』という言葉が強烈に頭に残った。
やはり、私は彼に心を許しているのだ。
その事実に、ようやく驚きが追いついてくる。
付き合う以前とは関係性が変わったから当然なのだけれど、確かに、悠を苦手だと思わなくなったのは自覚していた。
元々は、悠が一方的に突きつけてきた条件で、私は流されるがままに従っただけ。
彼の出す問題に正解しなきゃ別れられないなんて、常識で考えたらおかしいのだ。
今言うべきだと、直感が告げる。
自分を鼓舞するように胸を叩いて、私は足を止めた。
至って真剣に、真面目に、私はそう告げた。
【第16話へつづく】
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。