気がつけば、知らない場所にいた
辺り一面、四季折々の花が咲く花畑
風が花の甘い香りを運んでくる
真ん中には、澄んだ川が流れている
光が反射して、宝石みたいにキラキラ光ってる
そこに、人影があった
ふたりに抱きつくと、優しく包み込んでくれた
暖かい────
その時、頭の中に声が響いた
"あなた!あなた!!"
と、私の名前を必死に呼ぶ声
それは次第に増えて、何人もの人の声がした
その時、強風に煽られた花びらが、私をクルクルと包み込んだ
最後に、両親がにっこりと笑っていたのが分かった
その花びらは自然と量を増やし、私を完全に包み込んだ
甘い香りに絆されて、いつしか眠りに着いていた
私はゆっくり目を開ける
眩しくて、細く目を開けるのが精一杯だ
気がついた瞬間、森の匂いと血の匂いがした
そして、あの沢山の声も────
やっぱり、私の居場所はここだ
私の為に一生懸命になってくれる人……
私の為に泣いてくれる人……
私の為に喜んでくれる人……
父様、母様………私、しばらくそっちには行かない
こっちを思いっきり生きて、いっぱい笑って、泣いて
それからまた会いに行きます
もしかしたら、ふたりより幸せになるよ
その自信あるもん
私には、大切な大切な、命をかけたくなるくらい大切な……
家族がいるから────
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!