『返事を返す機会をください』…そう言った彼女は俺とアトリエに来ていた
そしてなぜか真っ白で袖余りするくらい長い袖に膝が隠れるくらいの胸にリボンが着いた新品のワンピースに着替えて戻ってきた
俺も念の為置いていた服に着替えた
そして床にめちゃくちゃ大きな画用紙置いて
ペンキが入ったバケツをいくつか並べて
素足で絵を描き始めた
返事の言葉でも描いてくれているのだろうか?
と思ったが違うようで
彼女は自分の服にペンキや絵の具がつくのはお構いなしに…なにか…特定の物を描いているようには見えない
なんかまるで…
妖精が湖の上で踊っているように描いている
バレエでも見てるみたいだ
そしてすごく楽しそう
あっ転けた
いつぞやと同じように彼女は仰向けに転んだ
また真っ赤な絵の具が彼女の髪を染めている
前と違うのは…
彼女がなんだか嬉しそうっていう点
その光景に俺は
ツルッ
ドサッ
自分もすっ転んだ
しかも彼女に覆い被さる形で
これで我慢しろとか無理
…
~あなたside〜
キス…早いなぁ…
わたしまだ返事返してないのに…
わたしはどこにも行かないのに
彼は今捕まえたいようです
胸の奥があったかい
ふわふわして…なんか気持ちよくて…
やっぱりわたしは間違ってなかった
あの時のように赤く染まる床…
最後に…唯一無事だった白いペンキが倒れた
そして先に倒れた真紅の絵の具と混ざりあって画用紙を染めた
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!