みんなが撮影してる間、恭平と私は2人きりで、優しさで放っておいてくれてるのかそれとも話しずらいだけなのか。
「……恭平」
恭「んー?」
「…恭平、」
恭「なんやねんお前 笑 」
" 用ないなら呼ぶなや "
って笑いながら言われるけど、また彼の名前を呼んでしまう。
…ああ、本気で具合悪くなってきたかも。
「恭平……、」
恭「…なに、どしたん」
いつもより優しいその声色で、私の隣に腰掛ける。
…具合悪かったら許されるかな、
言い訳になるかな、
本能のままに恭平の肩に頭を乗せれば少し動揺したみたいだけど、ぎこちなく頭を撫でられる。
役目を終えたようにソファーに戻っていくその手を、ぎゅとつかめばまた動揺の声が聞こえるけどここまできたら完全に無視。
…今、正気じゃないのわかって。
熱にうかされて、どうかしちゃっただけだから。
恭「…お前まじでやばいって」
「……ん、わかってる」
恭「熱あんの?」
私の額に触れようとするけど、恭平の手は私の手と繋がっているから。
「………〜っ、…、」
少しかきあげられた恭平の前髪。
ぴたっと触れ合う額同士。
身体がぶわぁっと熱くなるような感覚がして、恭平が眉をしかめるのすら、近すぎるこの距離でよく見える。
恭平 「…なんか熱い気がする」
……恭平、あの女優さんとこの距離で演技するんかな。
キスシーン、とるんやな。
「……恭平、」
恭「ん?」
ドキドキして、恭平しか見えなくなる。
近すぎるこの距離も、何もかも言い訳にしようとする私はずるいかな。
「……恭平、、」
恭「…やからな……っ、、に…ん、」
柔らかい感触がしたと気づいたときにはもう遅くて、目の前には目を見開いた恭平がいた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。