「……え、」
恭「おう、」
ズカズカと上がってきて私の腕をとって寝室へ連れていくけど……こっちは正直何が何だか分かってない。
ただでさえいつもより思考力が下がっているのに。
「…お見舞い、来てくれたん?」
恭「だって俺以外行けそうになかったし」
「でも、、恭平にうつしたら大変、」
恭「はいはい、ええからもう寝て」
無理やり布団に押し込まれたって寝られるわけないやん。
だって寝付けんかったんやもん。ずっと。
恭「何買ったらいいかわからんくてさ、…なんか欲しいものある?」
「……ゼリー」
恭「ん、買ってくるわ」
私の頭をふわっと撫でて微笑んでくれるから、なにこれ、夢?なんて。
いつもはぶっきらぼうなのに。
夢じゃありませんように。
気づけば自分の手を伸ばして、恭平の腕を掴んでいた。
びっくりした顔の恭平と目があって、急に自分のした事が現実味を帯びる。
それでも、何故かこの腕は離せないまま。
「あ、あの…えっと、」
恭「…どした、?」
「…あんま寝れんくて………寝るまでおって欲しいなって、、」
ドキドキするのも、体が異常に熱いのも、
全部全部熱のせい。
恭「………あー、外出んのめんどなってきたわ」
「え、?」
椅子に座って私に背を向けたまま部屋にある少女漫画を手にとる。
「…いてくれるん?」
恭「…だから寝ろって、」
恭平、耳赤い……
照れ隠しで投げやりにいわれた言葉、あったかかった。
「…ありがとう」
恭「…あー、もううるさい、はよ寝ろって」
口悪…笑
思わずくすっと笑えばやんわり睨まれる。
恭「は、なんなん?病人のくせになんで寝らへんの。子守唄でも歌おか?」
「…っえ!うん!」
恭「や、あの、歌わないです笑」
自分で言ったくせに無理やり終結させて背を向ける。
明日からきっと、またあんまり話せない元の状態に戻るだろう。
それでも私たちは信頼し合っているし、いい仲だと思う。
私たちはあまり深く関わらない。
だけど不仲とは少し違う。
「おやすみ」
恭「ん、おやすみ」
恭平の心地いい声で、ゆっくり目を閉じた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。