第12話

奪う
2,808
2021/05/25 15:00
影山side
影山飛雄
遅いんで、送りますよ。
あなた
え、あ、送るというか、
建物一緒ですけどね。
彼女はふふっと笑った。
笑ったら目が線になるんだな……と思った。
影山飛雄
知ってますよ!







5分前

宮侑
飛雄くんって
あなたのこと好きなん?
影山飛雄
は?
日向翔陽
え?付き合ってんじゃねぇの?
影山飛雄
だから付き合ってねぇよ
何回も言わせんな。
日向翔陽
痛い!イダダダダ!
ごめんって!影山!
宮侑
よし。飛雄くん。
あなたを追いかけり。
そんでかっこよく
「遅いんで送りますよ」って
言うてやるんや!
影山飛雄
え?
宮侑
Go!
影山飛雄
え?
宮侑
はよせなあなたかわいいけ、
変な奴にしつこく
絡まれてるかもしれんよ?
影山飛雄
それは困る。
宮侑
それなら行ってこい!
そんでもう、
唇の一つや二つ奪ってき!
布団にでも押し倒してやれ!
影山飛雄
はぁ?
日向翔陽
侑さん、
もうそれ、18禁マークが
付くじゃないですか!
宮侑
そんくらいの気合いで行け。
影山飛雄
はい?
日向翔陽
影山、健闘を祈る!
なんて言われて、
侑さんの言った通りに
「遅いんで送りますよ」って言ったら
「建物一緒ですけどね」と正論で返された。

変な奴にしつこく絡まれているかと思って
走ってきたのに……
あなた
ん……か……さん!影山さん!
影山飛雄
どうかしました?
ぐりんと彼女の方を向くと
驚くほどに顔が近くてドキッとした。
あなた
えっと、
あ、めちゃくちゃ眉間に
シワが寄ってたので、
どこか悪いのかと……
影山飛雄
どこも悪くないです。
たぶん……
あなた
そーですか。
影山飛雄
き、今日、いつもと
雰囲気違いますね。
あなた
あー、さすがに変な服は
着ていけませんよ。
影山飛雄
人、たくさん居ますもんね。
あなた
はい。
そしたら駅についてタイミングよく電車が来て
数分で最寄りの駅まで到着してしまった。
駅からアパートまでの約15分。




無言。


無言。


無言。





ただひたすらに無言。
あなた
影山さん、やっぱり
熱でもあるんじゃないですか?
ぼーっとしてますよ?
影山飛雄
全然大丈夫です。
あなた
鍵も違うのさしてるし。
影山飛雄
?!!
よく見ると、実家の鍵をさしていた。
あなた
ちゃんと食べて寝てくださいね。
それじゃあ、
影山飛雄
あの。
あなた
?どうかしました?




─────────────

がぱっと起き上がると部屋の中にいて
布団で寝ていた。
あなた
あ、おはよーございます。
起きたんですね。
あなたさんが居た。
え?なんで?何してたん?
影山飛雄
???!
試合が終わり、
侑さんに言われて彼女を追いかけ、
電車に乗って……
帰ってきて…………?
思考がぐるぐる回っている。


ピト



影山飛雄
ん?
あなたさんがおでこをくっつけていた。
なんか、ち、近い……

回っていた思考がパッと止まった。
あなた
んー、熱はないと
思うんですけどねー
あ、家に入る前に
睡魔と疲労に襲われて、立ったまま寝たのか。
──────────
宮侑
唇の一つや二つ奪ってき!
───────────
このタイミングで思い出すとか……
どんだけかよ。

でも、潤った薄紅色の唇が目の前にある。
綺麗だなあ。
キス……できなくもない。


いや、ちょっと待て。
誰ともキスなんかしたことないし。
そもそも女の人にそんなことしてはいけない。
第一付き合ってもないから!
あなた
うわっ、すごい顔が赤い!
水、持ってきますね!
影山飛雄
はあ、
でも、知ってみたい。


ドラマやら恋愛の映画みたいな
展開になったら、
彼女はどんな顔をするだろう。


例えば抱きついてみたら。
手を掴まえて俺の唇を重ねたら。
いっそ床に押し倒してみたら。

どんな顔をするだろう。
俺は、気付いた。

自分が変態かもしれないということ。





──────────
あ、次回話に
18禁いれるつもりはありません。
ちょっと期待した人、すみません。

作者、18禁上手に書いたことないし、
書けない自信があるので。
体験もしたことないです。
彼氏もいないです。いたこともないです。

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