ま、まずい…!目の前のジョナサンさんは、私の言うことを絶対信じてない…!私が今嘘を言ったと思ってる!
恐る恐るジョナサンさんに視線を向けると、彼は怖くなるくらい淀んだ目をしてじっと私を見ていた。すぐにそっぽを向いた。
耳元でそう囁いたジョナサンさんに恐怖した私は、思わず小さな悲鳴を上げた。見かけによらず随分と怖い人であるらしい。
しかしこの空気。本当のことをちゃんと言った方が良いのではなかろうか。いくら怖いとは言え、実際に迷惑をかけてしまったのだから、そう言ったことはしっかり報告すべきなのでは?
相当な勇気が必要だったが、言ってしまえばそれで終わる。そう自分を勇気づけた私は、ゆっくりと深呼吸して頷いた。ジョナサンさんの目が見開かれた。
震えながらそう言うと、にっこりと笑ったジョナサンさんは私の頭に大きな手を置いて、優しく撫で始めた。何で…?
そう言って、私が出会ったあの怖い男の人について包み隠さず話した。あの人は何者だったんだろう。お家の前で逃げてきちゃったから、よく分からなかったなぁ…。
一方で、私の話を聞いたジョナサンさんは眉間に皺を寄せて「ディオ…?」と呟いた。もしかしたらその人はディオさんと言うのかも……しれない?
ご近所さんだから知っているのだろうと思いながらも、そのディオさん(?)のことを思い出していると、急に大きな何かに包まれた。ジョナサンさんだ。
唐突なことに驚いている私を他所に、しっかりと私を抱き締めたジョナサンさんは、私の背中をゆっくりと擦りながら言った。
私が困惑してそう言った直後。ジョナサンさんは衝撃的なセリフを放った。
一層低い声でそう言ったジョナサンさん。躊躇いの気持ちなんて微塵も見られないくらいサラリと言ったので、「えっ」と言う声すら出なかった。
まるで、その発言に驚いている私が可笑しいのかと思ってしまうくらいナチュラルにそう言った彼に、私は絶句するしか出来なかった。
更に何が恐ろしいかと言うと、ジョナサンさんの異常な発言に対して4人が一切抗議しないことだ。長男の言うことだから逆らえないのか、それともまさかとは思うけど……4人ともジョナサンさんに同意しているのか。
どちらにしろ、そんな4人の行動も私の中の恐怖を煽った。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!