なんと、私の呟きが聞こえてしまっていたらしい。ま、まだギリシャ語だからセーフだよね、内容分かってないし、セーフだよね!?
にしてもまさかここで人が来るなんて……いや、彼は悪くない。彼は全く悪くないんだけどごめんなさいちょっとビックリしてしまいました…()
慌ててドライヤーを戸棚にしまい、「あ、す、すみません!」と謝る。確実にヤバい奴だと思われたに違いない。だって誰もいない洗面所で独り言言ってたんだよ?絶対引かれたって…。
そう笑顔で言った彼。確か何て言ったかな、じょう…たろうさんじゃなくて!それはもっと背の高いどこか怖そうな雰囲気の人だった。じゃあこの人は…?
と言うか名前すら聞いていなかった気がする。流石にホストファミリーの名前も知らないのは些か失礼ではなかろうか、と思ったので名前を聞くことにした。
急にピシッと姿勢を正して、妙に畏まった返事をした仗助さん。私の前でそんな風にしなくても良いのに…やっぱり日本の人は礼儀正しいのかな。
取り敢えず邪魔になっているような気がしたのでそろりそろりと洗面所を出た。思えば、お風呂から出てそのまま髪の毛を乾かしたから結構喉が乾いた。
キッチンすぐそこだし、向こうから持ってきたコップに水道のお水でも入れて飲もうかな。冷蔵庫から少し氷を貰うことにしよう。
そう思ってキッチンに向かっていると、仗助さんも付いてきた。あれ、洗面所に用がある感じではなかった…?でも先ほど入る時に言っていたことを思い出すと、そんな気もする。
そう言って戸棚から適当なコップを取り出し、そこに氷を入れてお茶まで入れてくれた仗助さん。随分と気遣いのできる人であるようだ。
実は初めて見た時髪型がリーゼントだったから、「もしや不良なのではなかろうか」と不安に思っていたのだが、どうやらそこの心配は必要なさそうだ。やっぱり人は見た目だけで判断するものじゃないな。
お礼を言ってからコップを受け取ってお茶を飲んだ。体温がかなり上がっていたので、氷でキンキンに冷えたお茶はそれはもう染みるものがある。
お行儀の悪いことに、その場でごくごくと一気飲みしてしまった。どうしても喉が乾いていたので一気に飲んでしまったのだ。
そう言うと、私からコップを受け取ってその場ですぐ洗い出した仗助さん……何してるの私は!ホストファミリーの方に自分が使ったコップ洗わせるなんて!
「私が洗いますよ!?」と言おうとした時にはもう洗い終えていた仗助さん。あ…時既に遅し…と申し訳ない気持ちになっていると、仗助さんが私を見て驚いていた。
きっと私と同じく学生の人だから忙しくて家事に手が回らないのだろうか。ならば尚更申し訳ない。次からはちゃんと私が洗うぞ…!
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!