それは、多分。6歳の誕生日だったと思う
私は、両親に捨てられた
恨んだ
凄く凄く
6歳の私でも分かった
『あぁ、捨てられたんだな』って
私は途方に暮れていた
もう死ぬのかって、ね
歩いた
もう何をしたらいいから分からなかったから
死ぬ前に、せめて沢山のところを見たいって
当時の私は思ったのかな
歩いた
沢山。歩いた
疲れた
そらそうだ。歩いたら疲れる
そうしたら、お腹も空いてきた
けど歩くのは辞めなかった
そしたら、遠くにゴミ捨て場が見えた
そこで私は驚いた
多分中学生くらいの男の子が、
可愛い
すっごく可愛いウサギのぬいぐるみを捨てていたんだもの
私は男の子が居なくなった途端ぬいぐるみを回収した
死ぬなら、このぬいぐるみと一緒に最期を迎えたいと思った
それなら幸せかなって
そう思って、声に出した途端
何故か、捨てられたこのぬいぐるみと私を重ねちゃって
この子を捨てたあ い つ が許せなくなって
殺した
しょうが無いよね
この子を捨てたんだもん
私は、悪くない
……………………………………そう信じ込むことが出来たら、
どれだけ良かったか
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。