第11話
1-10
昼休みのことだ。
若干僕には見覚えのある女の子が、幸葵くんを呼び出した。
幸葵くんはわずかに目を細めたが、その少女の元に行く。
眺めていた教室の男子がざわついた。
そう……彼女とは去年のクラスが一緒だった。
可愛い系美少女として学年でそこそこ人気のある、四宮鈴音さんだ。
廊下で二人は話しているようだった。
内容はさすがに聞こえない。
ただ、教室のガヤがひどい。主に男子。
状況はなんとなくお察しである。
校舎裏とか中庭とか少女漫画のお決まりのような場所ではないが、昼休みに可愛い女の子が男の子を一人で呼び出しに来る。
緊張気味でなければなんでもあり得そうだが、緊張気味で頬が赤らんでいた気がするから……やはり、告白だろう。
応援する男子の声や女子の黄色い歓声が騒がしい中、哀音お手製の卵焼きにぶすりと箸を刺して持ち上げ、僕は淡々と口に運ぶ。
なんとなく、だが。
鈴音さんの一世一代の告白は、失敗に終わるような予感がしていた。
理由は二つ。
一つは、今朝の出来事。
もしかしたらだが、あの手紙の主は鈴音さんだったのかもしれない。
もう一つは、行く前の幸葵くんの表情の揺らぎ。
そんなにあからさまではなかったが、嫌悪もしくは不快と取れる感情が滲んでいたように思う。
その悪感情と破り捨てた手紙を繋ぐのはあまりにも容易な気がして、僕は約束通り言い触らさないよう昼食に集中した。
そんな顔で食べた昼食は、料理上手な哀音が作ったはずなのに味がしない。