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第7話

1-6
放課後。

僕は使っている机に、教科書と書きかけのノートを広げた。
_幸葵@こうき_
幸葵こうき
あなたは残って勉強ですか?
(なまえ)
あなた
家に帰るとやる気なくすからね。今のうち
_幸葵@こうき_
幸葵こうき
へぇ
すると背もたれを前にして、幸葵くんが座り直す。

僕のノートをのぞき込まれて、ちょっと恥ずかしい。



お世辞にも頭がいいとは言えない僕のノートを見られるのは、気恥ずかしかった。
_幸葵@こうき_
幸葵こうき
字、綺麗きれいですね
(なまえ)
あなた
そ、そんなことないよ!
_幸葵@こうき_
幸葵こうき
いえ、字の綺麗な人は頭がよくないというらしいので
(なまえ)
あなた
そ・れ・は!
似たようなものを聞いたことがある。


叫んだ僕の顔はきっと夕焼けに負けなかっただろう。
(なまえ)
あなた
天才は字が汚いの間違いだよ!?
_幸葵@こうき_
幸葵こうき
えっ、そうでしたっけ?
(なまえ)
あなた
そうだよ、それに何気傷つくよ!


頭悪いとド直球で言われるとは、思ってもみなかった。


そりゃ、相手は生徒職員全員が口をそろえて神童と呼ぶ人だけれども!

比較対象を間違えている気がするよ。
(なまえ)
あなた
天才は字が汚い。確か脳の処理速度に手が追いつけないからっていう理由じゃないっけ
_幸葵@こうき_
幸葵こうき
ふむふむ
まさか僕が幸葵くんに教えることがあろうとは。
少し絶句した。

こういう雑学には詳しいと思っていたのだが。



すると幸葵くんはむっと眉根まゆねを寄せる。
_幸葵@こうき_
幸葵こうき
つまり俺は凡人と
(なまえ)
あなた
いやいやいやいや、言葉の綾だから

ちなみに見せてもらった幸葵くんの字は、すこぶる綺麗だった。

字を読めるに越したことはない。

憎たらしいほど綺麗な文字とにらめっこ。
_幸葵@こうき_
幸葵こうき
いつまで見てるんですか、あなた
(なまえ)
あなた
メモまで丁寧で見やすいとか……さすがというか……



例を一つ挙げれば、今日の数学の授業範囲についてだ。

要所要所に下線が引かれ、場所によっては「他は全てこの公式の応用」と書かれている。


正直見やすい。

その証拠に幸葵くんの教科書を見ながらだと、解く速さがいつもより速い気がする。

するすると答えが導き出せるのだ。
(なまえ)
あなた
魔法みたいな教科書だね
_幸葵@こうき_
幸葵こうき
それ俺のですってば
(なまえ)
あなた
もうちょっと貸してよ
_幸葵@こうき_
幸葵こうき
……仕方ないですねぇ
あきれたように言いながらも貸してくれる辺り、幸葵くんはいい人だ。

けれど、気になることがある。



あれは今日の数学の授業でのこと。

幸葵こうきくんの隣の席の北見きたみさんと言ったか──が数学の問題を教えてほしいと言ったとき、幸葵くんは素っ気なく「自分で考えてください」と突っぱねた。

少しだが、人と距離を置いているように見えたのだ。



自己紹介もあんなにこざっぱりとしていたから、あまり人と関わることに興味がないのかなとも思う。



今日の数学の授業のみならず、他にも勉強を教えてほしいといったたぐいの誘いは断っていたはず──。
_幸葵@こうき_
幸葵こうき
あなたのニックネーム!
(なまえ)
あなた
うにっ!
頬をぷにっとつつかれる。

そこにはどこか膨れた顔をした幸葵くんがいた。


普段は鉄面皮だが、最近表情がわかりやすくなってきた。
_幸葵@こうき_
幸葵こうき
どうしたんです?心ここに在らずといった感じで
(なまえ)
あなた
あ、いやなんでもな
_幸葵@こうき_
幸葵こうき
なんでもないなら教科書返してもらいますね
(なまえ)
あなた
ちょ、タンマタンマ
取り上げられそうになった教科書を引っ張る。

幸葵くんはあまり力を入れていなかったのか、すぐに教科書は僕の前に落ちてきた。




気のせいかな。

僕とはこうして普通の距離感を保っているし、他人を避けているだなんて早とちりだったかなと思った。
◇◆◇
結局その日はなんだかんだで、幸葵くんは終わるまで付き合ってくれた。

「仕方ないですね、あなたは」と言いながらも、わからないところは解説してくれる。

やっぱりいい人だな。






日が傾いて空が藍色に染まってきたところで、さすがに今日は終わりにしようと席を立った。
(なまえ)
あなた
付き合ってくれてありがとね
_幸葵@こうき_
幸葵こうき
……いえ
暗がりの教室で、幸葵くんの表情はうかがえなかったが、嫌がっているわけじゃないといいんだけど……。

なんせここまで付き合ってくれたのだから気を悪くしていない……と思いたい。





校舎を出ると、空は半分あい色で半分だいだい色。

中間が紫になっていて綺麗きれいだ。
(なまえ)
あなた
今日は助かったよ
_幸葵@こうき_
幸葵こうき
それならよかった
半分夜空の夕焼けの下。

幸葵くんは笑った気がした。