第3話
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復習を始めると、少しは点数がましになった。
といっても下の下だった成績が中の下に浮上したくらいで、極端に上がったわけじゃない。
噂の神童くんなんかは、ずっと順位表の頂点に君臨している。
ここまで違うと、嫉妬する気も起きない。
きっと、頭の作りから違うのだろう。
なんとか進級に支障のない程度まで成績を上げた僕は、無事に高校二年生になった。
当然クラス替えがあって大きく同級生の顔ぶれが変わったようだが、あまり僕の生活に支障はなかった。
一年生では、ついぞ友達ができなかったのだ。
ちょっと寂しいので、二年生では友達の一人も作っておきたいものだ。
クラス表が貼り出される中。
ふと、目に留まった名前があった。
少し気になった。
白崎くんが誰かというのは、言われなくてもわかった。
夜空のように真っ黒い髪に、星みたいな琥珀色の瞳。
聞きしに勝る美貌だ。
見ようと思わなくても目を惹き付けられる。
この顔に、成績優秀か……聞いていないけど、運動もできるのかもしれない。
なるほど、THE完璧人間って感じだ。
大きなクラス替えがあったため、自己紹介の時間が設けられた。
自然と教室のみんなの目は、白崎くんの方に集まる。
出席番号順に始まった自己紹介は、やがて白崎くんの番になった。
誰もが彼に注目。
僕も彼がどんな言葉を発し、どんな人となりを見せてくれるのか気になった。
す、とほとんど雑音を立てずに起立した白崎くんが、口を開く。
そして、同じようにほとんど雑音を立てず着席した。
辺りがガヤガヤと騒がしくなる。
それはそうだろう。
期待した自己紹介が、十秒も経たないうちに終わったのだ。
しかも内容は名前だけ。
そりゃびっくりだ。
けれど本人は何食わぬ顔。
なかなか進まない自己紹介に、少々苛立っているようだ。