第29話

⚖️蒼の使徒
6,662
2022/11/27 10:50



@ 国木田独歩side






 __理想とは何か 。


 其の問いへの答えは無数に有る 。



“眼鏡無しの男”が何処か一点を見つめている 。


棚に置かれた湯呑みからは湯気がゆらゆらと昇っている 。



 曰く言葉である 、


 思想である 、


 あらゆる意味の源泉である 。


 だが俺に云わせれば 、


 其の答えは明確だ 。


 俺の手帳の表紙 、


 そこに書かれた単語である 。



シャツを着た男が眼鏡をかける 。


卓上に置かれた手帳を手にする 。


其の手帳の表紙には 、


『 理想 』と毛筆で大書されている 。


其の手帳を懐に仕舞う 。



 理想…… 、


 此手帳には俺の全てが書き込まれている 。


 予定 、計画 、目的 。


 この手帳が俺の未来の全てだ 。



探偵社の事務所の前の扉で立ち止まり 、


腕時計を見る国木田 。



 ……十秒も早く着いてしまった 。


 俺の名前は国木田独歩 … 。


 現在を往く理想主義者にして 、


 理想を追う現実主義者 。



腕時計の針がきっかり八時丁度を指す 。
国 木 田 独 歩
時間だ

___
__
_
国 木 田 独 歩
お早うございます
中 島 敦
国木田さん助けて下さい .ᐟ
オフィスに入った国木田を縋るようにして見る敦 。
国 木 田 独 歩
何だ朝っぱらから ?
中 島 敦
だだだだだ太宰さんが……あれです… .ᐟ
太宰は窓際の机の上に立っていた 。


しかも 、大仰の様な身振りで国木田に話しかける 。
太 宰 治
あ﹣.ᐟ.ᐟ 国木田君大変なンだ .ᐟ 之を見給えよ .ᐟ.ᐟ
…… 。


ハイになった太宰 。
国 木 田 独 歩
何がだ
太 宰 治
だから之だよ .ᐟ.ᐟ
大袈裟な身振りで空中を指すが 、


何も無い 。
国 木 田 独 歩
俺にはお前の阿呆面しか見えンが ?
太 宰 治
遂に辿り着いたのだ .ᐟ.ᐟ
太 宰 治
之が死後の世界 、黄泉比良坂 .ᐟ
国木田はあまりの太宰の変わりように敦に尋ねた 。
中 島 敦
国木田さん
国 木 田 独 歩
あぁん ?
中 島 敦
多分之です
敦の手には如何にもヤバそうな 、


食べかけの茸 ( 緑色 ) と完全自殺読本 。


太 宰 治
矢張り『完全自殺読本』は名著だなぁあははははは.ᐟ.ᐟ
太 宰 治
裏山に生えた茸を食するだけでこンなにも愉快な自殺の道へ逝けるなンて .ᐟ
甲高い笑い声を上げながら太宰は暴れ回っていた 。
国 木 田 独 歩
毒キノコでも食ったか……
中 島 敦
其れがですね 、致死性の猛毒キノコと間違え__
太 宰 治
遂に捕らえた虹色の草履虫だ .ᐟ よし 、家で飼おう .ᐟ.ᐟ
敦の胸ぐらを掴み 、揺さぶる太宰 。


国木田は最早ため息しか出なかった 。
中 島 敦
国木田さ ~ ~ ~ ~ ん……
国 木 田 独 歩
出勤後の書類整理だ 、終わるまで待て
青ざめた顔で
中 島 敦
ええええええええ﹣﹣﹣﹣﹣﹣
と叫んでしまった 。
太 宰 治
凄いぞぉ 、草履虫だから___
太 宰 治
美女の寝顔はみほ___
太宰は国木田の頬を引っ張り、邪魔する 。
国 木 田 独 歩
オリャアァァ
び た ﹣ん .ᐟ.ᐟ.ᐟ.ᐟ


太宰は床に叩きつけられてしまった 。
国 木 田 独 歩
やかましいわ .ᐟ.ᐟ
太宰 、気を失う 。


 こ ん な に 相 性 悪 い 二 人 が 、


 ど う し て コ ン ビ 組 ん で る ン だ ろ …… 。
春 野 綺 羅 子
国木田さん、社長より本日の任務が届きました
敦は気を失い 、間抜け面をしている太宰を見ながら一人悩んだ 。









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