@ 芥川龍之介side
芥川の外套は静かに座る鏡花の喉元まで伸びる 。
つぅ 、と一筋血が流れる 。
鏡花はじっと動かず壁を見ていた 。
@ 有栖川あなたside
少しばかり声を変えて普段とは違う印象を与える 。
此 処 は 歌 劇 団 か 何 か な の か … ?
と 云 う か 、
気 づ か れ て い な い … 。
珈琲と乾蒸餅を持って来た店員と声が重なる 。
……気が合いそうだ 。
直ぐ近くの店を指さす 。
本 当 に … 太 宰 さ ん な の か 。
太宰が嬉しそうに此方を見た 。
店員は盆を持って下がる 。
カップを手に取り 、一口珈琲を飲む 。
美 味 …… 。
普通に答えた 。
…… 国 木 田 さ ん が よ く 怒 っ て ま す よ ね 。
知 っ て ま す よ … 私 …… 。
此名前は言った事無い筈 。
だって 、亡くなった母の名だから 。
太宰は目を見開き 、口元に手を当てた 。
小首を傾げ 、太宰から目線をそらさない 。
太宰は少し懐かしげに目を細めると 、困ったように微笑んだ 。
ご く り 。
有栖は少し焦った様に聞いてしまった 。
上空から激しい機関銃の音がした 。
外に硝子の破片が散らばっている 。
太宰はというと特に気にせずくつろいでいる 。
探偵社は襲撃如き 、どうってことない 。
n e x t ⇒
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!