@ 中島敦side
困った顔をした彼 。
またまた箕浦刑事が怒鳴った 。
乱歩は食い気味に言った 。
乱歩は左手を差し出し 、小首を傾げた 。
杉本巡査は口をあんぐりと開けて驚いていた 。
杉本巡査の顔色は焦りから少し汗ばんでいた 。
其れに慌てようが凄い 。
乱歩は微笑みながら言う 。
ふんッ 、貴様の舌先三寸はもう沢山だ
刑事は振り向き 、巡査に言い放った 。
“ 見 せ て や れ ”
微動だにしない杉本巡査 。
目を伏せて俯いている 。
動けない杉本に追い打ちをかける乱歩 。
流石の刑事も焦りを見せた 。
杉本はもう 、動揺を隠せずに居た 。
此処迄的確に当てられてしまったのだ 。
刑事は否定しろと叫ぶ 。
杉本は銃をホルスタ﹣から取り出そうとした 。
しかし 、同時に撃鉄を起こそうとしている 。
※ 撃鉄 _ 弾丸を発射させる為に雷管を強打する部分 。うちがね 。
太宰も敦も目を見開いた 。
必死の形相で銃を構えて 、カタカタと震える 。
歪んだ顔は狂気に満ちており 、もう元の顔は無かった 。
と 、敦の背中を押した太宰 。
敦は其の勢いで飛び出した 。
@ 有栖川あなたside
目が覚めると 、ベッドに寝かされていた 。
黒薔薇の浮かぶ空間に有栖は直ぐに分かった 。
此 処 、 は … 闇 の 国 …… 。
視線だけを動かし 、未だ動かない頭を必死に回す 。
紫の猫が布団に乗っかって来た 。
ずしりと重みがお腹に来る 。
お腹に乗った丸いデブ猫の相手をする 。
三日月型の瞳と目が合う 。
ケバケバの尻尾で有栖のお腹をぺちんぺちん 、と叩いていた 。
軽く三桁いってそうな年齢の猫 。
彼は有栖を孫の様に可愛がり 、割と常識の通じる猫だった 。
右足で口を覆い 、裂けたような口で歯を出して笑った 。
す ん っ 、、、
チェシャ猫は瞳孔をキュッと細くすると真顔になる 。
n e x t ⇒
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!