海人side
ピピピピッ
「……」
廉のことを抱きしめようと手を伸ばすと
なぜか宙を切った
…あ、
昨日は別々に寝たんだっけ…
『泣いたら許されると思ってんの?』
そんなこと思ってない…
でもやっぱり、そういう風に思われてたんだ…
すごく、情けないな…
寝室に廉はいなくて
リビングにもいなくて、
廉がいつも愛用してる鞄もなければ
よく履いてるスニーカーもない
朝早くから仕事なんて聞いてないけど、
もうお仕事行っちゃったのかな…
.
寝る時は隣で廉も寝てて、
朝起きたらおはようって廉が言ってくれて、
仕事に行く前は頑張れって抱きしめてくれて、
そんな些細な一瞬が俺にとっては宝物で
俺のモーニングルーティーンに
廉は欠かせない存在だった
今日は午後からグループで仕事だし、
その時にちゃんと謝らなきゃ…
────────
もしかして俺のこと避けてたりするのかな…
避けられてたらどうしようもないじゃん…
なんてことを考えていると
楽屋の扉が開いた
.
.
.
掴んだ腕を冷たく振り払われた
その反動でよろけたのを紫耀が支えてくれた
.
.
next…
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!