第5話

4話
696
2021/11/24 15:21
あなた
……



あんなに優しいヒーロー志望、初めて見た。
あなた
まあ、表だけだよね



騙されてはいけない。



私は知ってる。



優しい顔をして近づく"ニセモノのヒーロー"を。



私は、ニセモノを倒すために雄英を受けたんだ。



ニセモノは、ヒーローになるべきじゃない。



ニセモノがいるから、ヴィランが生まれるんだ。
あなた
……早く帰ろう




……あ、そういえば寄るとこあったんだっけ。



危うく忘れるところだった。



私は真っ直ぐ歩いていた道のわき道に入る。
あなた
……相変わらず暗いなぁ
あなた
ここの道



それから20分ほど歩き、ある建物の前に来た。



ここが私のお決まりの場所。



一種のひみつ基地だと私は思ってたりする。
あなた
入るよ~



扉をノックし、そう告げた。



外は晴れているから、窓から少し日が差している。



私は、自分の家よりもここが落ち着く。
おう、あなたおかえり
あなた
ただいま
試験はどうだった?
あなた
多分受かったとは思う
そうか
ならよかった



目の前のその人は、その報告を聞き微笑んだ。
どんな奴らがいた?
あなた
……んー
あなた
みんな優しそうに見えたよね
あなた
個性もまあまあって感じ
まあまあ、ね
あなたの報告なら信用できる
あなた
ありがとう?
あなたは絶対裏切らない
そう信じてるからな
あなた
当たり前だよ
あなた
私はここにいないと自分を保てないし
あなた
それに、私の目的も果たせないからね
そうか、よかった



切島くんは確かに優しかった。



今すぐにでも明るい所へ連れ出してくれるような、そんな人のように感じた。



でも、この人は、私に安心感を与えてくれる。
試験はどんな内容だった?
あなた
えっとね……



試験は私にとって簡単だった。



念の為と点を稼ぎまくって、個性の使いすぎで倒れかけるのは予想外だったけど。
へえ、なるほどね
個性はどう?
バレてないよね?
あなた
大丈夫
あなた
個性はむやみに知られるな、でしょ?
わかってるなら、それでいいんだ
あなた
うん



ふと、腕につけている時計を見ると、お母さんを思い出した。



そういえば今日は試験だからって、家でずっと待っててくれてるんだっけ。



心配してるかな?
あなた
お母さん心配してるかもしれないし
あなた
私はもう帰るね
……ああ
お母さんによろしく、な
あなた
うん

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