しなもんさんは行ってしまった。
僕の頭の中にはしなもんさんがぼーっと映っている。
あのとき、なぜ何もいえなかったのか。
僕はまた歩き出す。
誰と話しても
しなもんさんのことが頭から離れない。
たぬきハウジングのガラスに写った僕は
顔が真っ赤だった
ぱちん!
顔を叩いて気持ちを切り換える
家の説明を聞き、家の場所をきめる
僕は無意識にしなもんさんの家の隣にしたいと言っていた
突然言われてびっくりした
そして今気づいた
僕は
しなもんさんが好きなんだ
自分でも顔があつくなっているのがわかる。
そう言ってたぬきちさんはテントをたててくれた
テントに入る
僕はうずくまって顔を手で覆った
あつい。
目を閉じるとしなもんさんが浮かんでくる
あの人に、しなもんさんに
会いたい
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!