無料ケータイ小説ならプリ小説 byGMO

第9話

帰還
蝶屋敷に戻ってすぐに義勇さんを一室に運ぶと同時にアオイに声を掛け、布団と水に濡らした手拭いを持ってくるよう頼む。義勇さんの様子からかなりの急用だと察したのか、いつもより迅速な対応だった。

他の皆さんには出入口に近い別室で待ってもらった。先に帰っても大丈夫だと言ったのだが、全員満場一致で待つと言った為に、そうするしかなかった。

布団にゆっくりと寝かせ終えると、すぐにしのぶが冷や汗を滲ませながら調合した解毒薬を持ってきた。先程の簡易的なものを基盤に作ったから早かったのだろう。それを注射器で打ち込むと、取り敢えず一安心の溜め息をつくことは出来た。

しのぶに一旦義勇さんを任せ、俺はあの3人の部屋へと向かった。


ついて、襖を開けると蜜璃さんがすぐに飛び付くように聞いてきた。
甘露寺 蜜璃
富岡さんはどうだった…!?
かなり焦った様子だった。他人の事をここまで自分の事のように心配出来るこの優しさは鬼殺隊の柱の中でも少ないだろう。
獏良 遼
大丈夫だそうです。ちゃんと解毒薬も打ち込みましたし、後は本人の意識の回復を待つだけです。脈も正常だったので明日辺りには目覚めていると思いますよ
竈門 炭治郎
はぁ…良かったぁ…
その奥で落ち着きがないようにそわそわとしていた炭治郎も俺の一言で安堵の息を大きく吐いた。兄弟子が毒にやられればそりゃあ心配になるだろうに、よく取り乱さずにここまでついてきたな。
時透 無一郎
それにしても富岡さんが毒をくらうなんて珍しいね
獏良 遼
しのぶ曰く、皮膚からも吸ってしまう類いのものだったらしく、かなり強力な毒らしいです。
無一郎さんが最もな事を言う。なんて言ったってあの柱の一人だ。義勇さんだってそう簡単に喰らった訳ではあるまいと聞いてみた結果、空気に溶け込みじわじわと体を蝕む強力な毒だったそうだ。
甘露寺 蜜璃
そうだったのね。でも、しのぶちゃんは何ともなくて良かったわ!
獏良 遼
そう、ですね…
…そう、新たな疑問点はそこだ。何故しのぶは無事だった?彼女だって毒でやられていてもおかしくはなかったはずだ。なのに、彼女は冷静に状況を把握し、俺らに伝える事までも出来ていた。

最悪の予想しか出来ない脳内は無一郎さんの声が届いた事で思考を一旦止めた。
時透 無一郎
どうしたの、遼?
獏良 遼
あ、いえ何でもないです!それよりお二人は自身の屋敷に戻られては?体は休めた方が宜しいと思います。無茶言った分際でこんな事言うのも我ながらどうかと思いますが…
慌てて言葉を紡ぐ。でも、皆さん疲れただろうし、俺の我儘一つでここまで翻弄させてしまって本当に申し訳無かった。

結果論としては、俺の頓珍漢にも思えた予測はあっていた訳だが、少なくとも鬼殺隊におけるかなり重要な人材である二人を俺の一意見と私情で、振り回してしまったことに変わりは無い。
甘露寺 蜜璃
いやいや!遼君の勘があったからこそだよ!
時透 無一郎
じゃあ、その言葉通り屋敷に戻らせてもらうね
ほっと胸を撫で下ろし気が抜けると、疲れと眠気が襲ってきたようで蜜璃さんは欠伸を一つ零し、無一郎さんは目元を擦った。
竈門 炭治郎
俺は善逸と伊之助の部屋に戻ってもいいですか?
獏良 遼
ああ。炭治郎も悪かったな、ゆっくり休めよ
炭治郎の頭をくしゃりと撫でる。すると、少し照れたように笑ったから、それが随分と年下らしく見えて少し安心する。長子気質が過ぎる部分があるからな〜炭治郎は。

竈門 炭治郎
あ、あの!遼さん!
獏良 遼
どうした、炭治郎
竈門 炭治郎
あっ……い、いえ…何でもありません
獏良 遼
そうか、ゆっくり休めよ
竈門 炭治郎
はい…

俺は炭治郎が善逸達の部屋の方向へと行ったのを見送ると、出入口まで蜜璃さんと無一郎さんを送った。深々を頭を下げながら見送った。


自分の仕事を終えたような気持ちになり、俺自身も肩に入っていた力が抜ける。

しのぶと富岡さんの看病を代わろう。あいつだって絶対に疲れているだろうから。気張りっぱなしじゃ、あの小さな背中に負担がかかる。

俺はそう思いながら蝶屋敷の裏側へ向かおうと身を翻した。廊下が軋む音は一つしか聞こえない。こんなに静けさに包まれた夜も案外久しぶりなのかもしれないな、と静寂に浸りながら義勇さんの病室へと向かう。

そしてその部屋の前の襖まで来た時、中からしのぶの声が聞こえてきた。
胡蝶 しのぶ
…貴方が本当に居なくなってしまうのではないかって、私凄く怖かったんですから…
そう震えた声で言葉を零す。声だけとは言え、こういうのを見るのは久しぶりだ。襖に軽く寄りかかりながら目を瞑ると瞼の裏に今のしのぶの顔が容易に想像出来てしまう。

あぁ、そうだよ。しのぶは列記とした女性なんだ。師範の言う通り、ちゃんと女性としての幸せを何としても掴ませてあげたい。
胡蝶 しのぶ
ねえ、富岡さん。雨、止みませんね…
未だ涙に濡れた声でそう絞り出すしのぶを横目に、俺は師範の思いを代わりに叶える為に訓練場へと向かった。師範の強さに少しでも追いついて、少しでもしのぶを守れるようになる為に。






その夜、勿論雨など降ってはいなかった。



━━━━━━━━━━━━━━━
サク
どうも皆さん、サクです
サク
これにて柱の合同任務編は終了になります!
…これ完全なるぎゆしのなんですけど、タグ付けた方がいいですかね?いやでも、ぎゆしのはメインではないので付ける必要は無い…のか?
サク
そして次から伏線を回収していきます。

炭治郎との意味深な会話
しのぶさんの覚えている不思議な感覚
主人公が柱にならない訳
呼吸と型に込めた意味合い……etc
サク
まぁざっとこんな感じの所をよいしょよいしょと回収していきますので、宜しくお願い致します。
次回からは〜獏良遼の因縁編〜的な感じになっていきますので、引き続き見て頂けると幸いです!
サク
それでは、今回はこの辺で
バイバイ〜