時計の針の音がやたらと大きく聞こえる。
みんなへの連絡なんて放棄して水晶を構える。
後ろから様子をうかがっている2人がそこら辺はなんとかしてくれるだろう。
らっだぁの他力本願寺〜
スッ
水晶が宙をきって飛んでいく。
しかし、その水晶は宙をきるだけ。
刀がこちらに向けられる…
手に汗が滲む。
もう、時間がない…!
現在時刻7時28分!
スッ
刀は宙を切る…
反撃しないと…死ぬ。
でも、水晶を投げる余地を作らせないように巧みに刀は振られる。
チクタクチクタク
時計は7時29分をさす。
ええぃ!もう、闇雲にでも、いたずらにでも、投げちゃえ!
スッ
勿論、避けられた。
コンっ
この場には不似合いな軽快な音を立てて水晶は窓に当たり、跳ね返る。
あぁ、後、10秒…もないや…
ゾムは、刀を下ろし、薄らとどことなく寂しそうな笑みを浮かべていた。
ガンッ
重々しい音を立てて水晶は壁に当たり跳ね返る。
水晶の進む方を目で追ってゆくと…
ゾムが見えた…
心の奥底から淡い希望が湧いてくる…!
あの水晶が当たってくれれば…!
残り時間は、4秒…3…2…1…
パリン
水晶が弾ける音がした。
萌木色の光は俺たちを包んだ…!
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!